大阪大学 レーザー科学研究所

研究グループGROUPS

超高圧科学(HPS)

グループの概要

高強度レーザーを物質に照射することにより,高温・高密度状態すなわち高エネルギー密度状態が生成されます.本グループでは「超高エネルギー密度科学(e-HEDS :extremely High Energy Density Science)」を多面的な視点で開拓し,基礎科学や産業分野への応用を探ることを目標としています.具体的には,高強度レーザーによって生成される高エネルギー密度状態を時間・空間的にコントロールすることにより, 10億気圧以上の超高圧力状態を生成する手法を開拓するとともに,地球・惑星の内部状態などに適用する研究を行っています. また、この高エネルギー密度状態を用いた材料加工技術(レーザーピーニングなど)に関する応用のほか、衝撃波駆動の核融合点火方式の開発研究などもすすめています。

研究室HP

研究内容

1.レーザー生成衝撃波の時間・空間制御による前人未到の超高圧力の発生

高強度レーザーを物質に照射すると,物質表面で「アブレーション」が発生することにより高圧力の衝撃波がその物質を圧縮します. レーザーの照射強度を上げると圧力も大きくなっていきますが,照射強度の上昇にしたがって吸収率も低下するため,その圧力は10テラパスカル(1億気圧)が上限とされています.この限界を超えるために①爆縮プラズマによる収束衝撃波,②レーザー生成短パルス高速電子駆動衝撃波など,時間的・空間的に衝撃波をコントロールする手法を用いることにより, 100テラパスカル(10億気圧)以上の超高圧力を発生させるための研究を行っています。

図1 レーザー生成高速電子による高圧力発生概念図

2.レーザー生成衝撃波の地球・惑星科学研究への応用

高強度レーザーで得られる衝撃波を用いることにより,他の手法では不可能な超高圧状態を得られることから,この状態を地球や惑星内部と同じような条件へ適用する研究をすすめています. 高強度レーザーによって得られる地球・惑星内部の状態を調べることにより,直接観測が難しい内部の構造や状態を明らかにすることができます.また,このような高圧力状態は隕石が惑星などに衝突する際に地球表面上で瞬間的に発生し,その際にクレーターの形成や岩石の蒸発,地殻中への衝撃波の伝播など様々な現象が起こります.この隕石衝突現象を高強度レーザーによって再現することにより,上記のような現象をはじめ生命の誕生や絶滅などへの応用を共同研究によってすすめています。

図2 レーザー生成衝撃圧縮試料の回収例(Nagaki, et al., 2016)

3.レーザー生成衝撃波による材料変性・改質の研究

高強度レーザーによる衝撃波が物質中に伝播すると,その材料中に圧縮力(応力)を与えることができます.この応力付与法はピーニング(Peening)と呼ばれ, これまではショット(小さい鋼製の玉など)を高速で材料に衝突させる方法が主流でしたが,これを高強度レーザーで生成する衝撃波を用いてより高圧力かつ制御性の高い加工法を目指して研究を行っています. 高強度パルスレーザーを用いることにより,このピーニングだけでなく切断や成型など幅広い材料の加工に関する応用の展開が期待されているため,これらの素過程に関する要素研究を重点的にすすめています。

4.超高圧衝撃波による核融合点火の研究

レーザーによる核融合を実現するためには,高強度レーザーによる圧縮(爆縮)により核融合反応が起こる超高温・高密度状態,すなわち超高圧力状態を生成することが必要です. 言い換えれば,より小さいレーザー装置で超高圧力状態を創り出すことがレーザー核融合研究の主題です.我々はレーザー圧縮(爆縮)の最終段階で上記のギガバール衝撃波を生成,空間制御することにより超高圧力状態を生成し,核融合点火条件に適用する研究を行っています。

図4 衝撃波点火による核融合方式の概念図

5.ロングパルス高エネルギーレーザーの応用研究

これまでの高エネルギーパルスレーザーは,ナノ秒(10-9 秒)以下の短いパルス幅のものが主流であり,最近ではアト秒(10-18秒)に迫る仕様のレーザーも活躍しています. これらは高圧力関係のみならず広い分野で応用研究がすすめられていますが,比較的長いパルス幅のレーザー,とくにマイクロ秒(10-6 秒)周辺のパルスレーザーによる研究はほとんど行われていませんでした.我々はサブマイクロ秒(10-7 秒)からサブミリ秒(10-4 秒)のパルス幅をもつ激光II号レーザーを使用し,ナノ秒以下の時間スケールでは見られない物質の圧縮,変性,化学変化などを得るための研究を行っています。

図5 激光Ⅱ号レーザー装置

メンバー

重森 啓介 教授
大道 博行 特任研究員

 

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