大阪大学 レーザー科学研究所

研究グループGROUPS

プラズマ・流体物理学(TLP)

グループの概要

TLPグループでは、レーザー核融合研究に加えて、超高強度・超短パルスレーザーと物質との相互作用の結果として起こる相対論的粒子加速イオン、 相対論クーロン爆発などの高エネルギー密度物理を研究対象としている。また、それらを利用した癌治療、燃料電池開発、放射性廃棄物処理、 レーザー核融合といった応用を視野に入れ、理論・ シミュレーションに基づく各手法でこうした基礎から応用に至る幅広い物理現象を統合的に研究し、 基礎理論の体系化を目指している。

研究室HP

研究内容

1.相対論クーロン爆発と中性子源開発

超高強度のレーザーを数百ナノメートル(髪の毛の太さの数百分の1程度,あるいは原子数千個を直列させた程度の大きさ)のサイズのナノクラスターに照射すると、 電子やイオンとなって四方八方に飛散する。こうして加速された高速のイオン(プロトン等)を利用して中性子を発生させる事が出来る。こうしたプトトンや中性子を使えば、癌治療、 核融合エネルギー開発、地雷探査、燃料電池開発、核廃棄物処理、いった様々な応用を考える事が出来る。

2.自己組織化アルゴリズムによるレーザー核融合照射配位の最適化

慣性核融合では燃料の高密度圧縮が必要不可欠であり、そのためには主燃料を可能な限り均一に照射・圧縮する必要がある。 有限な数のレーザー(X線)光源で最大限の一様照射を得るための照射配位の最適化は照射系設計における最も重要なタスクの一つとなっている。 従来の設計は正多面体や、それらを下に幾何学的な考察により最適化されたものばかりであった。 例えば、米国のロチェスター大学にはオメガレーザー(60ビーム)があるが、それが60本のビームを使って得られるベストの配位なのか否かは、 必ずしも明らかではなかった。

最近、当研究グループによって新たな自己組織化を利用した最適化アルゴリズムを開発された。その原理は極めて簡単で、球面上にN個の点電荷をばらまき、あとはクーロン反発力によって、 勝手に動き回らせ、最終的に落ち着いた時の配置が、最も安定な配置となるのである。

3.衝撃点火核融合

2004年春、当研究グループはレーザー核融合における第三の点火方式を提案し「衝撃点火」と命名した。 これは、(i)中空の円錐内 に配置された点火用燃料シェルが自ら1000 km/s以上の超高速をもって圧縮された主燃料に激突し、 (ii)衝撃波圧縮過程を通じて運動エネルギーを熱エネルギーに直接変換することでホットスポットを生成し、 (iii)高効率の核融合燃焼を実現しようというものである。本点火方式およびターゲット構造は、他の研究機関からは一切提案されておらず、 全く新規かつ独創的なデザインである。「衝撃点火」は将来の核融合炉につながる以下の魅力的な長所を備えている。
(a) 物理がシンプル(基本は流体物理のみ)
(b) 高エネルギー利得設計が可能
(c) 安価でコンパクトな炉設計が可能
鍵となる物理は、(1) Rayleigh-Taylor 流体不安定性を抑制しつつターゲットを100 0km/sという前人未到の超高速にまでg/cm3オーダーの密度を保ちつつ加速できるか、 (2) 入射レーザーから燃料コアへの十分なエネルギー伝達効率が 得られるか、という点にある。 (1) に関しては、最近の予備実験で従来の最高記録を3倍近く上回る1000 km/sが樹立され、本研究に対する国際的な注目を集めている。

4.非線形プラズマダイナミクスに内在する自己相似解に関する研究

自然現象の中には数多くの自己相似現象が見られる。自己相似と聞いてピンと来なくても、 近年巷に浸透しているフラクタルという言葉を聞けば何となくイメージしてもらえるかもしれない。 結晶、血管、海岸、乱流、宇宙などの構造が良く取り上げられる題材である。つまり、 静的な系に関して言えば“サイズは様々に異なるが同様のパターンが繰り返される様”、 あるいは動的な系に関して言えば “刻々と変化する物理現象の中にも同様のパターンが維持されている様”と表現できる。

レーザーによるアブレーション加速物理も自己相似的性質を内包している。時間と共にターゲットの質量は減少し、速度は増加していく。厚みもどんどん減少し、最後は燃え尽きて消滅してしまう。しかし、 そうした時間変化の中にありながら空間プロファイルは自己相似である事がシミュレーションによっても確認された。 しかも、上記のように平板(球殻)ターゲットの加速運動は非定常である。 ところが、これまで殆どのアブレーションの理論モデルは“定常”を仮定してきた。積分が比較的簡単に実行でき、 もっともらしい空間プロファイルも求まるので、重宝されてきたのである。しかし、与えられた微分方程式系を数値的に積分すると、 必ずある点(特異点)にぶつかって計算がストップしてしまう。換言すれば、従来の定常解析モデルは実体の無い“虚解”ということになる。 これに対し我々は、系を最初から非定常なものとし、時間の偏微分項を落とさずシステムが時間発展する矛盾の無い自己相似解を発見した。 現在、この解析解を使ってRayleigh-Taylor不安定性の正確な時間発展を求めようとしている。 その他にも,星の生成過程において自己重力とエネルギー散逸が拮抗しながら自己相似的に時間発展する解や、 従来の電荷中性仮定を使わずに有限質量プラズマが電子とイオンの2流体として自己相似的に膨張する解など、 新たな自己相似解が発見されている。

その他の研究テーマ

  • カーボンナノチューブ加速器によるプロトンビーム生成
  • 超多次元ターゲットによる高密圧縮
  • 新型高速点火ターゲット設計
  • 相対論レーザーによる電子加速
  • 超新星爆発における衝撃波ダイナミクス
  • レーザーイオン加速
  • Polar-Direct-Drive 照射設計
  • 真空加熱によるレーザーの異常吸収

メンバー

村上 匡且 教授

 

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