大阪大学 レーザー科学研究所

研究RESEARCH

レーザー核融合エネルギー研究

レーザー核融合エネルギー研究プロジェクト

プロジェクトの概要

レーザー核融合の核融合点火方式の一つである,高速点火実証実験の第一期計画は,日本において重点化された核融合研究の一つであり,将来を展望する革新的技術の研究開発に必要な規模で,学術研究として展開されています.自然科学研究機構核融合科学研究所との双方向型共同研究の下,国内外の研究者と連携しながら,実験及び理論の両面から,高速点火実施及びレーザー核融合エネルギーの実現を目指した研究が行われています.

研究期間

2001年4月開始

計画の概要

1. 高密度プラズマの形成

より小さなエネルギーで核融合点火を起こすためには,核融合燃料を固体密度の1000倍以上という超高密度に圧縮しなくてはなりません.燃料の圧縮過程は,流体力学的に不安定であるため,燃料表面の均一性の改善,照射レーザー強度の一様性の向上,流体力学的不安定性の抑制,流体力学的不安定性に耐える形状設計等が重要です.少ない圧縮エネルギーで超高密度を達成するにはエントロピーの増加を抑えなければならず,圧力の時間履歴を精緻に制御しながら,準静的に近い圧縮を実現することも必要です.最適設計には,多次元の放射流体シミュレーションが活用されています.同時に,形成された高密度プラズマの計測技術の開発も重要な研究です.

2. 高強度レーザーとプラズマの相互作用による高エネルギー粒子の加速と伝播

高速点火方式では,プラズマを介して,高強度レーザーを高エネルギー荷電粒子(電子・イオン)ビームに変換し,粒子ビームで高密度プラズマを加熱します.レーザーとプラズマの相互作用による粒子加速機構の理解と制御,粒子ビームのプラズマ中の伝播と制御が重要な研究です.高速点火方式による点火の実現には,ペタワットレーザーとプラズマのマルチピコ秒間の相互作用という新たな領域での加速機構が見つかっています.粒子ビームの伝播制御に関しては,レーザー駆動方式によるキロテスラ磁場を用いた方法が研究され,興味深い成果が出ています.高エネルギー粒子の加速と伝播を計測するために,蛍光X線,制動放射X線,遷移放射などを利用した計測技術を開発しています.非常に微小な領域で高速に変化する現象であり,実験のみに基づく理解には限界があり,理論・シミュレーションが重要な役割を担っています.

3. 高速点火方式による点火温度の実証

超高密度に圧縮した燃料を,レーザー加速ビームで加熱することで,核融合点火温度である5000万度の実現を目指します.プラズマの温度計測のために,X線分光や核計測が重要です.時間ゲート,核反応中性子のトラック検出などを活用し,強烈なノイズが発生している環境から,物理的な情報を抜き出す計測技術の開発が進められています.得られた成果の,核融合点火・燃焼の実証,更にはエネルギー源としての外挿性を担保するために,多次元で多階層の物理を扱う統合シミュレーションコードの開発も進められています.

4. レーザー核融合エネルギー炉工学

レーザー核融合エネルギーの実現には,プラズマ科学やパワーレーザー科学に加え,トリチウム燃料を扱うトリチウム工学,放射線や高温・高圧に耐える材料工学,万が一の事態に備える安全工学,核融合反応で発生した熱を効率的に取り出す伝熱工学等々,最先端の工学を統合しなくてはなりません.核融合工学の研究者らとネットワークを構築し,核融合エネルギーの実現に向けた活動を進めています.

進捗状況及び成果の概要

レーザー高速点火計画に関しては,平成28年度に核融合科学技術委員会にて進捗の報告及び同委員による現地視察が行われ,進捗状況と今後の評価について公表されました.

国内連携機関

北海道大学,東北大学,東京大学,東京工業大学,富山大学,光産業創成大学院大学,岐阜大学,核融合科学研究所,福井工業大学,京都大学,大阪大学,摂南大学,兵庫県立大学,広島大学,九州大学 他

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