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【活動報告】
出張報告:高強度レーザーとその応用に関する国際会議(ICUIL 2006)出席およびフェムトレーザーズ社訪問
桐山博光 (独)日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門

ICUIL 2006国際会議出席
   9月25日〜9月29日にフランスのカシで開催された高強度レーザーとその応用に関する国際会議(ICUIL 2006)に出席し、成果の発表や各国の研究者との議論を行った。本会議は高強度レーザー研究を中心トピックとした会議であり、2年に1度の割合で開催され世界各国の高強度レーザー研究に関わる研究者が集う。今回の参加者は世界各国より数百人、発表件数は124件(招待講演13件、口頭発表55件、ポスター発表56件)であった。
   本会議において、15件のペタワット(PW)レーザーの建設計画に関する報告がイギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、ロシア、韓国、日本からなされた。
   イギリス・ラザフォードアップルトン研究所のグループからは単一ショットではあるが、10PW(30fs, 300J)以上の出力を有する光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)レーザー、及び20秒に1ショットと高繰り返し可能なPW(30fs, 15J×2ビーム)チタンサファイアレーザーをそれぞれ2011年、2007年までに完成させるとの報告があった。
   ドイツでは高繰り返し可能なPWレーザーの開発を行っており、マックスプランク研究所のグループから10Hz, PW(5fs, 5J)半導体レーザー(LD)励起Yb:YAG-CPAレーザー励起OPCPAレーザーを2010年までに完成させるとの報告があった。また、イエナ大学のグループからは、数分に1ショットの繰り返しを有するPW(150fs, 150J)LD直接励起Yb:ガラスレーザーの開発に関する報告があり、来年までに0.1Hz, 0.1PW(150fs, 15J)出力の達成を目指すとのことであった。
   アメリカのロチェスター大では5PW(1ps, 2.5kJ)、ローレンスリバモア国立研究所では1.5PW(400fs, 600J)、またフランスのレーザーメガジュールプロジェクトのプロトタイプレーザーとして7PW(3.6kJ, 500fs)、日本の大阪大学で10PW(10kJ, 1ps)とPW以上の出力性能を有する高エネルギー大型ガラスレーザーの建設を行うということであった。
   レーザーシステムの高強度化、高繰り返し化に伴い、周辺技術として大口径波面補正ミラーや高耐力誘電体多層膜コートの回折格子などの技術開発も行われていた。
   また、イギリス・ラザフォードアップルトン研究所のグループでは、単一アト秒パルス発生の駆動レーザーとして、1kHz, 10mJ, 5fs搬送波絶対位相制御型の数サイクルOPCPAレーザーの開発の進捗状況について報告があった。励起レーザーはLD励起のNd:YLFレーザーであり、1047nmの基本波で1kHz, 40ps, 1mJまで得られている。更に増幅を行い10Hz, 130mJが達成されている。今後1kHzの繰り返しで200mJを得るとのことであった(第二高調波では100mJ)。第1段目のOPCPAにはLBO結晶が用いられ、わずか7mmの厚みで1万倍の利得が200nm以上の広いスペクトル帯域で得られている。今後更に1つ増幅器を付け加えることにより、20mJ以上に増幅するとのことであった。
   レーザーシステムの高性能化により、高強度場物理やアト秒物理などの研究がより一層進展すると考えられ、今後の動向が注目される。

フェムトレーザーズ社訪問
 9月30日にオーストリアのウイーンにあるフェムトレーザーズ社を訪問した。Dr. Andreas Assionらと面会し、同社の超短パルスチタンサファイアレーザー発振器などの見学を行った。
 同社の発振器の安定性、ビーム品質、パルス幅、スペクトル幅などについて議論を行った。ビーム品質として空間モードはシングルモードで発散角は2mradであり、パルス幅は6fs前後、スペクトル幅は-10dBで300nm以上と優れた動作が可能であるということであった。また、安定性については、室温21℃、湿度50%の環境で2週間の試験が行われていた。連携融合事業における高強度レーザーの高強度化、高安定化を進める上で重要な技術であるとの印象を受けた。
先進的レーザーおよびその応用に関する代表的な国際会議及びレーザー関連の研究機関において、最新の動向調査や、各国の研究者との意見交換、及び専門メーカーにおける技術開発の現状を把握することができた。今後の連携融合事業の研究開発の遂行に活かしていきたい。
筆者は、"Development of a broadband, high-energy optical parametric chirped-pulse amplifier as a front end for a high peak power laser"と題する発表を行った。

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図1: 学会会場内のポスターセッション会場にて。英国ラザフォード・アップルトン研究所のIan Musgrave氏と並んで。
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