【活動報告】
2007.08.27 [Mon] Updated
研究動向調査: ドイツ研究機関訪問
日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門 桐山博光
訪問先: イエナオプティック社(JENOPTIK)、イエナ大学、フランフォーファー研究所、マックスプランク研究所(MPQ)、重粒子科学センター(GSI)
出張の内容及び成果
2007年1月14日(日)−1月21日(日)に超高強度レーザー及び産業用レーザーの分野で技術的水準の高いドイツにおけるレーザー研究専門の大学施設や研究機関を訪問し、成果の発表を行うとともに、施設見学並びに研究者との議論を行った。
まず、イエナにあるイエナオプティックス社のDr. Detlev Wolffらと面会し、高繰り返し、高品質レーザーの励起光源に不可欠な半導体レーザー(LD)について意見交換を行うとともに、製造工場の見学を行った。LDの出力及び効率は半導体技術及びLDマウント技術に依存し、近年の技術進歩に伴い、1 cmのバーより100 W以上出力が達成されている。寿命についてはCW動作で10万時間、パルス動作で10
10
ショットが期待できるとのことであった。2010年には160 Wの出力を有するバーが供給可能であるということであった。実験室レベルではすでに500 Wの出力が実現されていた。
イエナ大学のProf. E. Foerster及びProf. M. C. Klauzaと面会し、LD励起Yb:ガラスレーザーシステム(ポラリス)について議論並びに見学を行った。このシステムは発振器、パルス拡張器、2台の再生増幅器、3台のマルチパス増幅器、及びパルス圧縮器で構成されている。2台目のマルチパス増幅器まで完成しており、現在最終段のマルチパス増幅器を製作中とのことであった。2台目のマルチパス増幅器は240 JのLDで励起され、10−15 J程度の出力が光‐光変換効率5%程度、10秒に1ショットのレートで得られているとのことであった。最終段を完成させ150 J、150 fsのレーザー出力を30分に1ショットのレートで発生させるということであった。
フラウンフォーファー研究所の所長であり、イエナ大学の教授でもあるProf. Tunnermannらと面会し、ファイバーレーザーについて、意見交換及び実験室の見学を行った。1つのファイバーからCWで10 kWの出力を目指しているとのことであり、現在2.5 kWの出力が回折限界の良好なビーム品質で、光‐光変換効率80%で得られていた。また、Qスイッチ発振のnsパルスファイバーレーザーにおいては、パルスエネルギー2.5 mJ、繰り返し率100 kHz,パルス幅10 nsで得られていた。 次にミュンヘンに移動し、マックスプランク研究所を訪問した。Prof. Ferenc Krauszらと面会し、光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)レーザーについて意見交換及び実験室の見学を行った。単一アト秒パルスの生成のために、OPCPAを用いた数サイクルレーザーの開発を行っている。PW(5 fs, 5 J)、10 Hzレーザーの開発が開始され、現在シード光を発生させる発振器などの整備を行っていた。4‐5年で完成させるとのことであった。励起レーザーにはLD励起のYb:YAGレーザーを用いるとのことであり、水冷式の薄型ディスクを用いた再生増幅システムにてパルスエネルギー3−4mJ、パルス幅1−2 ps、繰り返し率10 kHzまで開発されていた。また、3ステージでのランプ励起Nd:YAGレーザー励起OPCPAレーザーにおいては、10 TWのピーク出力が8 fsのパルス幅で得られていた。2μm帯の発振領域でパルス幅20 fsを有するOPCPAレーザーの開発も開始されていた。
これらの数サイクルOPCPAレーザーにおいて、搬送波絶対位相制御を行うとのことであった。このようなレーザーシステムの高性能化により、高強度場物理やアト秒物理などの研究が一層進展すると考えられ、今後の動向が注目される。
さらに、ダルムシュタットへ移動し、GSI(重粒子科学センター)を訪問した。Prof. Thomas Kuhlらと面会し、PW(500 fs, 500 J)ガラスレーザー(フェリックス)について意見交換及び装置見学を行った。システムは再生増幅方式を用いているので、コントラストが悪く10
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程度とのことであった。シリケート及びフォスフェイトガラスをハイブリッドに用いることにより、利得の峡帯域化を防いでいるということであった。コントラスト向上や、利得の峡帯域化を避けるためOPCPA導入を検討しているとのことであった。
ドイツの高い水準にあるレーザー関連の研究機関において、最先端の動向調査及び、研究者との意見交換を通して技術開発の現状を把握することができた。今後の連携融合事業の研究開発の遂行に活かしていきたい。
筆者は、"Status and future prospects of a J-KAREN laser system"と題する発表をイエナ大学及びフラウンフォーファー研にて行った。
写真:
マックスプランク研究所 Dr. F. Krausz, Dr. Laszlo Veisz, Dr. Stefan Karschらと並んで。
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