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【活動報告】
活動報告:CLEO/Pacific Rim 2007 参加
日本原子力研究開発機構 田中桃子

出張期間:平成19年8月26日−8月31日

   韓国のソウルにて開催された「The 7th Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics(略称CLEO/PR 2007)」に出席した。この会議は、環太平洋地区においてレーザー及びレーザー応用、光学素子などの研究に従事する研究者が集まり、研究報告および議論を通じて、この研究分野全体の底上げを目的とするもので、今回は韓国、日本、中国、台湾、シンガポール、米国、カナダ、オーストラリア等の環太平洋諸国を中心に、インドやトルコなどのアジア諸国、ブラジルなどの南米諸国、ドイツ、イギリス、フランス、チェコなどのヨーロッパ諸国から、総勢29カ国780件程度の参加があった。会議はソウル市内のConvention & Exhibition Center(通称COEX)にて開催された。26日は参加登録とレセプションのみで、27日の朝から4件のプレナリートークが行われ、その後5つの分科会に分かれて進められた。プレナリートークはサムソン電子のキム氏によるディスプレイ装置のCF紹介に始まり、東大の荒川教授による量子ドットの解説、マサチューセッツ工科大学のフジモト教授による光干渉トモグラフィー(OCT)の話、マックス・プランク研究所のクラウゼ教授によるアト秒光科学の講演が成された。CLEOはレーザー及び周辺技術を総括する、多分野に渡る内容を含んだ会議であるが、今回のメインテーマはこの4件のプレナリートークに代表されていたと考えて良い。分科会に分かれていたためにすべての分野を網羅したわけではないが、全体的にレーザー開発や基盤技術に関する討論は控えめで、レーザー応用研究、特に産業応用や医療、生物応用を視野に入れた研究に関連した、デバイス、量子ドット、OCTや表面プラズモン等のセッションが活発であった印象がある。
   出張者は、29日に「ZnO as fast EUV scintillator for the next generation lithography」と題するポスター発表を行った。これは、原子力機構で開発したX線レーザー装置を用いた時間分解分光計測により、酸化亜鉛(ZnO)がEUVリソグラフィー用のシンチレーターとして有用であることを示した研究発表であり、EUV光源、リソグラフィー、X線レーザー等の分野の研究者からは高い関心を寄せられた。この波長領域では、CCDなどの有効な画像装置が高額なうえ空間的な制約が多いなどの問題があるが、光源のマシンタイムが限られるために、詳細に評価が成されたシンチレーション物質があまりない。良い材料があれば使いたいという考えは、特にEUV光源の研究者は少なからず持っており、今後この種の内容の研究を進めておくことは、EUVリソグラフィーに限らず、FEL利用といった観点でも有用であると考えられる。
   EUV発生に関する講演は、短パルスレーザーアプリケーションのセッションで、チェコのPALSと韓国のGISTから、それぞれの組織でのX線レーザー研究の招待講演があった。EUVレーザーのセッションは、日本の文部科学省リーディングプロジェクトの、EUVプロジェクトのメンバーによる発表のみであり、EUVレーザーと言うよりは、EUV点光源用の周辺技術の講演で占められていた。EUVリソグラフィーの分野に関しては、アジア地区では日本がリードしているようである。X線レーザーに関しては、チェコのグループは以前より波長21 nmで、10 mJ、サブナノ秒程度のX線レーザーを実現しており、外部との連携による応用研究が活発である。主に、EUVリソグラフィーやFELを視野に入れた、光学素子のダメージの研究やリソグラフィー用光学系の評価の研究を行っている。現在、世界で応用研究に供されている、又は今後供する予定のX線レーザー装置の中では高出力であることが特徴であるが、パルス幅が長いことが問題視されているらしく、最近のトレンドである高調波によるシーディングを計画しているとのことであった。韓国のグループは、斜入射励起の過渡利得方式による13.9 nmのX線レーザー発振について、プリパルスの条件などを詰めた詳細な実験を行っていた。また、ネオンガスを用いて、13.9 nmでの高調波シーディングにも成功している。応用に関する計画についての言及はなかったが、態勢はともかく発振は利用に供することのできるレベルに達していると思う。また、韓国は現在ペタワットレーザーのための建物を建築中である。原子力機構や大阪大学とは方向性が似ているので、こちらも協力関係を築く一方で独自の路線を示していく必要があると考える。

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写真1:CLEO/PR 2007会場
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