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【活動報告】
活動報告:The Joint 32nd International Conference on Infrared and Millimetre Waves and 15th International Conference on Terahertz Electronics(IRMMW2007)参加
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター レーザーテラヘルツ部門 長島健

出張期間:平成19年9月2日−9月9日
出張先:イギリス・カーディフ

   The Joint 32nd International Conference on Infrared and Millimetre Waves and 15th International Conference on Terahertz Electronics(IRMMW2007)に出席し,高強度レーザー励起プラズマからのテラヘルツ電磁波放射について研究成果を発表した.またテラヘルツ電磁波放射及びそれらの応用技術について情報を収集した.
   この会議は1年に1回開催されており,開催地はアメリカ,アジア,ヨーロッパを順番に回っている.今年は昨年の中国に引き続いてイギリスでの開催された.対象とする範囲はミリ波から赤外までの電磁波の発生及び分光法,それらを用いた応用技術開発及び物理や化学の基礎研究となっている.プログラムを見ると530件程度の研究発表が申し込まれている.これには基調講演やポスター発表も含む.ポスター発表でキャンセルが幾つかあったようだが,その数は多くはなかったので500件程度は発表が行われたはずである.
   筆者は連携融合研究「ペタワットレーザー駆動単色量子ビームの科学」で実施している高強度フェムト秒レーザーパルス照射原子クラスターからのテラヘルツ波電磁波放射についてポスター発表した.ポスター発表会場では地ビールを自由に飲むことができた.そのせいか会場は活発な議論が交わされつつも和やかな雰囲気であった.発表開始後まもなく私のポスターに来られたのはドイツ・コンスタンツ大学のDekorsy氏であった.Dekorsy氏と個人的に面識はなかったが,我々のテラヘルツ業界では有名人で,なおかつ今回の私の発表は氏の研究範囲(固体物理,超高速分光)とはだいぶ異なると思っていたのでやや驚いた.電磁波放射機構を調べるために時間遅延を変えながら2つのパルスをターゲットに照射したらどうか,などのコメントを貰った.その他何名かの方が質問に来られた.いずれもロシアの方だったようである.
   本会議では例年と比較してバイオ及びメタマテリアルのセッションが増えていた.これらの分野に対する期待の高さがうかがえる.個人的に目についたのはテラヘルツ帯量子カスケードレーザー(QCL)に関する研究の進展である.QCLに関する基調講演が2件あった.QCLは量子井戸のサブバンド間を電子が遷移するときの放射を利用する.量子井戸一つだけでは効率が悪いので量子井戸を直列に多重に配置して電子を何度もリサイクルして強い放射を得る.この方法だと放射電磁波の周波数を大きく変えることはできないが,電磁波放射強度が高い.今回MITのHu氏は基調講演で4 THzで145 mW(連続発振)が得られたと報告している.さらに光源にQCL,検出器にマイクロボロメータアレイを用いてビデオレート2次元イメージ取得のデモンストレーションが示された.QCLは現在冷却する必要がある.現在の最高の動作温度は169 K(パルス発振)となっている,道のりは遠いと思われるが,QCLの研究者は室温発振を目指していくようである.

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写真1:会場となったカーディフのCity Hall.
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写真2:ポスター会場の様子.
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