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【活動報告】
活動報告: 米国サンノゼで開催された先進的レーザーとその応用に関する国際会議(CLEO/QELS2008)における諸外国の研究開発状況
日本原子力研究開発機構 岡田大

出張期間:平成20年5月4日−5月10日
出張先:イギリス・サンノゼ

   2008年5月4〜10日まで、英国サンノゼのSan Jose McEnery Convention Centerにて開催された先進的レーザーとその応用に関する国際会議(CLEO/QELS2008)に参加した。本年度のCLEO/QELS会議では、発表件数は1400件、展示会には300社以上の企業が参加し、世界最大規模の光学関連会議となっている。
   高強度レーザーの分野では、米国ミシガン大学の高コントラスト300TWチタンサファイアレーザーが報告されていた。コントラストの向上にはXPWが用いられており、メインパルスよりも時間的に500ps手前の箇所では1010のコントラストが得られていた。しかしながら、OPCPAを導入してないにもかかわらず、高コントラストが得られている理由については言及していなかった。また、過去の論文でもメインパルス直前(10ps程度)のペデスタルのコントラストは確認できていない。サファイアレーザーの最終増幅器用励起レーザーに関する発表もされており、4ビームで合計120Jの出力が得られ、繰り返し0.1Hzで動作するガラスレーザーが紹介されていた。ガラスレーザーの直径25mmの最終ロッド増幅器は、1ビーム出力30Jにおいて約6J/cm2のフルエンスで設計されており、近年の高耐久コーティング技術が伺える発表であった。
   ロチェスター大学のOMEGAレーザー開発状況も報告されており、会議4日目の高エネルギー短パルスレーザーというセッションでは、発表6件中の4件がロチェスター大学に関する発表であった。全体のシステム構成に関する発表において、ターゲットチェンバーへエネルギー425J、パルス幅11psのパルス伝送や、ナノ秒パルスで波長315nm、エネルギー1kJの伝送に成功した事が紹介された。OMEGAのフロントエンドにはOPCPAが採用されているが、励起レーザーの時間波形モジュレーションを抑制するために、励起レーザーの再生増幅器ミラーをVBG(Volume Bragg Grating)に置き換え、増幅スペクトル幅を140pmから36pmへ狭帯化する手法が紹介されていた。これにより、OPCPAの増幅過程における励起レーザーからシードパルスの時間波形へのモジュレーションが抑制され、再圧縮後のメインパルス近傍のコントラスト向上に成功していた。また、OMEGAレーザーに導入されている組み合わせ回折格子を用いたパルス圧縮器も報告され、47cm×43cmの回折格子を3枚横に並べて141cm×43cmの回折格子セットを4セット(計12枚)使用した構成となっていた。回折格子のアライメントには、フィゾー干渉計が用いられており、各々の回折格子は3本のアクチュエーターで微調整する仕組みになっている。回折格子群のアライメント維持精度は、12時間運転において平均0.08λ以下に抑える事に成功していた。
   ポスター発表においても、サンディアのペタワットレーザーシステム開発が報告されていた。全体のシステムの紹介と、エネルギー50Jおよびパルス幅500fs(ピークパワー100TW)で銅のターゲットを照射して、プロトン加速を行った実験結果等が報告されていた。用いられた銅ターゲットは厚み25・m、大きさ2mm×5mmであり、最大25MeVのプロトン加速に成功していた。照射レーザーパルスはFナンバー4のOAP(Off-Axis Parabolic)を用いて集光され、集光強度1019W/cm2が得られていた。パルスの時間コントラストについては、nsオーダーで10-6、psオーダーで10-8が得られていた。現在最終ディスク型増幅器において増幅エネルギー400Jまで得られており、500J以上(ピークパワー1PW)の出力を目指して開発が行われている。
   一方、近年のPW級高繰り返しチタンサファイアレーザー開発が盛んに行われているのを受け、企業展示会場ではフランスのAmplitudeとThalesレーザーにおいて、高出力Nd:YAGレーザー開発の熾烈な争いが繰り広げられていた。Thalesレーザーでは2.5J(532nm)、10HzのSagaシリーズが商品化され、現在10J、1Hzの開発を行っている様である。Amplitudeでは出力2J(532nm)を超えるPro-Pulseシリーズが商品化されている。
   ファイバーレーザー開発も非常に活発に行われており、Yb:KGWのモードロックレーザーを発振器として用い、LMAファイバーを主増幅器に導入したファイバーCPAレーザーシステムが数多く紹介されていた。ドイツのイエナーの発表では、パルス幅800fs、パルスエネルギー1mJ、パルス繰り返し50kHzが得られていたが、出力スペクトルに非常に大きなASE成分が残っており、平均出力からパルス繰り返しを除算した値から、MLパルスのエネルギーを算出している点には疑問が残る。
   今回のCLEO会議では、OPCPAと超高速ファイバーレーザーというセッションが同時刻にパラレルで開催される等、情報収集を行うだけでも困難であった。また、超高強度レーザー開発においても、単純に高出力化を目指すのではなく、利用研究に適した独自の研究開発を進めていく必要があると考えられる。

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写真:CLEO/QELS2008会場のSan Jose McEnery Convention Center.
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