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【活動報告】
活動報告 英国ラザフォードアップルトン研究所高強度レーザー研究施設見学と第11回X線レーザー国際会議出席
日本原子力研究開発機構 大道 博行

出張期間:平成20年8月17日−24日
出張先:イギリス・ロンドン,ベルファスト

   大阪大学レーザーエネルギー学研究センターと(独)日本原子力研究開発機構との連携融合研究の調査研究として英国ラザフォードアップルトン研究所の高強度レーザー研究施設の見学、研究情報の交換及び英国ベルファストのクイーンズ大学で開催された第11回X線レーザー国際会議に出席し、関連研究情報の収集、交換、及び招待講演を行った。以下、今回の出張の詳細を報告する。
   8月17日(日)に関西国際空港を出発しロンドンヒースロー空港に到着した。ここから列車・タクシーを乗り継いでラザフォードアップルトン研究所の宿舎へ夜到着した。ここでは最近大型放射光施設ダイヤモンドが稼働を開始しており、その利用者を含む共同利用研究者のために開設された本格的な宿泊施設リッジウエーハウスに宿泊することができた。施設は快適でかつ研究所に隣接しておりきわめて便利である。18日(日)の朝からラザフォードアップルトン研究所を訪問し、ホストのデビット・ニーリィ博士から説明を受けた。この研究所は世界最高クラスの高強度レーザーを擁し、数多くの先進的研究が行われている。まず、レーザー出力エネルギー500Jのペタワットクラスのガラスレーザー“バルカン”が稼働している。また出力パワー1ペタワットの2ビームチタンサファイアレーザー“ジェミナイ”が最終組み立てのフェーズに入っている。今回の訪問では、原子力機構の研究に特に関係の深いジェミナイに集中した説明を受け、議論を行った。現状のレーザーパラメーターはパルス幅30フェムト秒、エネルギー15Jである。光学部品の手当てにより所定のパワーである1ペタワットを達成したいとのことであった。8月末にかけてレーザーの整備、集光照射系の準備を進め、速やかにターゲットのテストショットを開始したいとのことであった。最初のショットは重金属のターゲットを用いて行うことになっており、ターゲットからのX線、粒子線の放射特性を順次調べていく予定である。ラザフォードアップルトン研究所ではユーザー施設に徹した運営が行われており欧州を中心に多くの利用が提案されている。このため内部利用者も含め提案が受け入れられる割合は1/4〜1/6とのことである。今後原子力機構とは共通の課題である計測器、特にくり返しレーザー照射に対応できるオンラインリアルタイム計測器の開発、ターゲット開発と実験でのターゲットの高速交換システムの開発などにおける協力を進めていくことになった。18日午後3時から1時間のセミナーを企画していただき、大道より原子力機構におけるレーザー駆動粒子線発生とその利用研究について報告した。セミナー終了後ヒースロー空港へ直行しベルファストへ移動した。
   

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写真:ラザフォード研にて。 左よりニーリィ博士(ラザフォード研)、大道、ピロジコフ、匂坂(原子力機構)
   第11回X線レーザー国際会議がベルファストのクイーンズ大学で開催された。クイーンズ大学は1908年開設の伝統ある大学であり、物理学科のキリアン・ルイス教授が会議を主催した。会場は古い階段教室であり、参加者は約80名であった。会議の内容はX線レーザーの開発、X線レーザー動作の改良、X線レーザーの利用研究、高強度レーザーをベースにしたX線発生法、高次高調波発生などであった。X線レーザーの開発では、従来からの電子衝突励起法が主流である。平板ターゲットに対し励起レーザーを斜めから照射し、利得発生領域を集中的に加熱し、エネルギー1J以下のレーザーで飽和利得に達するX線レーザーが得られている。ただ波長がいまだに10nmまでであり、短波長化は大きな課題、あるいは壁となっている。コヒーレンス向上に大きく寄与する高次高調波のX線レーザー媒質への入射(シードX線レーザー)が詳しく調べられつつある。理論的にはマックスウェルブロッホ方程式をシードX線レーザーに適用したものなども現れており、X線レーザーのフルコヒーレント化が一般化するものと期待される。


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