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【活動報告】
活動報告 ドイツ・ダルムシュタットで開催された第30回レーザーと物質との相互作用に関する欧州会議(European Conference on Laser Interaction with Matter)に関する報告
日本原子力研究開発機構 西内 満美子

出張期間:平成20年9月1日−5日
出張先:ドイツ・ダルムシュタット

   2008年9月1〜5日まで、ドイツ・ダルムシュタットのDarmstadt Congress Center Darmstadtium、ドイツ重イオン研究所(GSI)、および、ダルムシュタット工科大学にて開催されたレーザーと物質との相互作用に関する欧州会議(ECLIM2008)に参加した。本年度のECLIM2008会議では、153件の発表(うち講演115件、ポスター38件)が行われた。今回の会議において、大きな2本の柱となったのは、超大型レーザーを使った核融合点火実験の話題と、そのようなレーザーによって地上において生成できる超高エネルギー密度物質における物理の話題、たとえば、天体現象を地上で実現するなどの話題である。
   まず会議初日において、世界各国の大型レーザーを用いたプロジェクトに関する報告が行われた。すなわち、フランスの超大型レーザー核融合実験装置LMJ建設プロジェクト、米国ローレンスリバモア研のNIF(国家核融合点火装置)プロジェクト、欧州プロジェクトの候補であるHiPER(高速点火核融合)プロジェクト、阪大レーザー研におけるFIREX(高速点火核融合)プロジェクトである。それらを用いた点火核融合実験のスケジュールと高エネルギー密度科学研究の提示などがおこなわれた。今後2,3年の内には達成されようとしている核融合点火は超高出力レーザー研究の今後の展開に大きなインパクトを与えると考えられる。
    超高強度レーザーを用いた基礎物理研究である、ELIプロジェクトの紹介がフランスの応用光学研究所からあった。ELIプロジェクトは、欧州プロジェクトの候補の一つであり、1023Wcm-2を超えるレーザー集光によって形成される超高強度場・超高エネルギー密度プラズマ中でのGeVを超える陽子線の発生、真空の絶縁破壊(陽電子、電子対創成)、ブラックホールの研究、などを目指すとのことである。
    このような超大型レーザー研究とならんで小型・高繰り返し運転可能なフェムト秒レーザーを用いた研究に関する発表も多く行われた。特に欧州では、レーザー駆動陽子線の発生・応用を目指して活発な研究が繰り広げられている。イギリスにおけるLIBRAプロジェクトはラザフォード研究所を中心に、陽子線発生などレーザー駆動量子ビーム源の開発とその利用研究を、またドイツにおいては、マックスボルン、マックスプランク、マクシミリアン大、デュセルドルフ大の連合で、陽子線加速とそれのプラズマ診断への応用を目指すプロジェクトが立ち上がっている。
    レーザー駆動陽子線の医学応用を目指したプロジェクトも世界的に次々と立ち上がっており、原子力機構関西光科学研究所における光医療産業バレープロジェクトをはじめとして、この8月に立ち上がったばかりのドイツ、ドレスデンにおけるレーザー駆動がん治療機開発を目指したプロジェクトの内容についても提示された。これらのプロジェクトにおいては、レーザー駆動陽子線の高エネルギー化、及び、発生した陽子線の伝送、照射という点が大きな話題となっており、それらについての発表が多く行われた。 
    このように、数多くの大型プロジェクトが次々と立ち上がって研究を行っており、それらの報告や、そのあとの議論を通して、世界各国で活発な研究活動がおこなわれている様子を改めて実感することができ、きわめて有意義であった。

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写真:ECLIM2008集合写真。会議の行われたGSI(ドイツ重粒子線研究センター)前にて。
   


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