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【活動報告】
研究動向調査報告書 ドイツ研究調査出張(ドレスデン研究センター及び腫瘍学センター,イエナ大学,ダームシュタット重イオン研究所)
原子力研究機構
織茂 聡

出張期間:平成20年11月9日−16日
出張先: 独・ドレスデン研究センター及び腫瘍学センター,イエナ大学,ダームシュタット重イオン研究所

    今回、原子力機構、阪大レーザー研との連携融合の研究テーマであるPWレーザーを用いた粒子加速、エクサレーザーの基礎に関連した調査研究を行った。調査は欧米地域の中でも特に全固体高強度レーザー開発とその産業利用(医療、工業等)で世界最高水準にあるドイツ国の関連研究機関を訪問することにより行った。 訪問先として、1)ドレスデン研究センター及び腫瘍学センター:がん治療用レーザー駆動陽子線加速装置開発と診断技術開発、2)イエナ大学:医療応用に向けての全固体高強度レーザー開発、3)ダームシュタット重イオン研究所:レーザー駆動粒子線加速器である。

1) 放射線腫瘍学センター:S. Pieckコーディネーター/J. Steinbach教授/W. Enghardt教授/他
 病院に併設されたOncoRay(放射線腫瘍学センター)にてドイツ・ドレスデンにおいて始まった「陽子線がん治療プロジェクト」を調査した。サイクロトロン(IBA製)を主加速器とした陽子線がん治療施設にレーザー駆動陽子線加速器開発の実験室を併設する計画である。サイクロトロンで一般の治療を行うとともにレーザー法の技術開発を進め、同一ビル内で臨床試験まで行ないうる計画となっている。建屋の予算は獲得済みであり今後の展開に注目を要する。

2) ドレスデン研究センター:T. Cowan教授/R. Sauerbrey教授(研究ディレクター)
 研究所講義室での機構の計画と研究成果を報告し、将来の研究協力を含めた情報交換等を行った。また同敷地内のPETセンター、電子線加速施設(150TW超短パルス高強度レーザー装置を含む)を見学した。細胞実験、動物実験までの道筋や放射線遮蔽に関し有意義な情報が得られた。

3)イエナ: 「フィリードリッヒシラー大学イエナ 量子エレクトロニクス研究所」E. Forster教授/C. Spielmanm教授/Kaluza教授/他
 朝9時からのカルーザ教授のレーザープラズマ中の磁場計測に関する研究のセミナーに参加し、午後2時からは機構の研究計画と成果の報告を行った。全固体(レーザーダイオード励起)のペタワットレーザーシステム(ポラリスレーザー:150J,150fs)の完成が目前となっており、現在100TW弱(1Hz,12J,150fs)での実験が開始できる状態にある。ターゲット照射用真空容器は地下に設置され、放射線防護等の考慮がなされている。他にアト秒科学やX線結晶学など、最先端の基礎科学実験用のレーザーや装置等を見学し、今後の研究展開に役立てることができた。

4)ダームシュタット重イオン研究所:M. Roth教授
 現在、GSIのガラスレーザーを使用したレーザー駆動陽子線加速実験とその陽子線ビームのソレノイド磁場による収束実験を行っている。また、来年度の関西光研でのJ-KARENレーザーでの実験提案の説明を受けた。原子力機構光医療連携センターが主催する2009年1月19日?23日の国際シンポジウムへRoth教授が参加することになっており、引き続き具体的な研究協力について双方で検討することになった。
 以上訪問した3カ所全てで歓迎され、当センターの現状と計画について広く理解していただく機会がもてた。また双方の協力による共同研究等の具体化に関し積極的かつ建設的な議論を行うことができた。きわめて有意義な出張となった。

   

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写真:(左)ドレスデン(FZD:Forschungszenturm Dresden Rossendorf)にて、 左からT. Cowan教授/ R. Sauerbrey教授/大道博行グループリーダー/筆者/福田祐仁博士。
(右)フリードリッヒシラー大学イエナにて、 左から福田祐仁博士/E. Forster教授/大道博行グループリーダー/筆者。
   


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