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【活動報告】
研究動向調査報告書 「HiPER-Japan共同研究会議ならびに英ラザフォード・アップルトン研究所クリスマス会議に参加して」
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
 西村博明

出張期間:平成20年12月17日−19日
出張先: 英国・Abingdon

     平成20年の年の瀬も迫る12月17〜19日 にわたり、標記二つの会合に参加する機会を得た。両会議ともロンドンから列車で1時間ほど北西にあるAbingdonのCosner’s houseと呼ばれる公共施設で開催された。会場周辺は数百年前の家々や修道院あとなどの保存地区とと聞く。
  HiPERとはEuropean "Hi"gh "P"ower laser "E"nergy "R"esearch facilityの略称で、欧州連合が建設を目指す高出力レーザーエネルギー研究施設(http://www.hiper-laser.org/)のことである。この施設を用いて、高速点火核融合を柱としたエネルギー源開発ならびにレーザーエネルギー科学の研究を実施する計画である。各種の準備活動を経て2008年4月より3年間1000万ユーロの予算を得ることに成功し、現在、レーザー設計の調査研究や、高速点火核融合ターゲット設計、関連するプラズマ実験、基礎物理リサーチなどが各WP(working panel)で実施されている。今回は、WP10核融合プラズマ実験班の代表を務める伊ミラノ大学D.Batani教授らの招聘を得て、日本側からは、三間センター長、疇地副センター長、田中和夫阪大工学研究科教授、兒玉了祐同教授の5名が、また、欧州側からは、D.Batani教授、P.Norreys教授(英ラザフォード研)、M.Koenig教授(仏LULI研)ら7名が参加した。HiPER計画の概要や活動の現状がChris Edwards博士(ラザフォード研)ならびにBatani教授から、また、日本におけるFIREX計画の概要と現状が三間教授、疇地教授により説明されたのち、西村やKoenig教授から日欧共同研究の進行状況が報告された。これらの後、WP10における共同研究の在り方について意見交換し、今後、情報ならびに意見交換を継続実施していくこと、HiPERウエブ環境を整え、両計画に共通して重要な研究課題(相互作用、結合効率、輸送、プリパルス効果、等)について情報交換すること、欧州側は特に、激光XII号やLFEXレーザーのような大型装置の運用に不慣れなため、これらの装置を用いた実験を通じて博士課程の学生や博士研究員が経験を積む機会を作ること、また、近々に開催される関連会合や日本で開催されるWSなどを利用し、情報交換の機会を増やすこと、などの合意を得た。
 HiPER計画はまだ第一期にあり、米国におけるNIFを用いた点火・燃焼実験、ロチェスター大学オメガEPを用いた高速点火研究、日本におけるFIREX第一期計画の正否が、第二期計画へ前進できるかどうかの鍵を握っている。  この会合の後、2日半にわたってラザフォード研クリスマス会議が開催された。これはラザフォード研にあるCentral Laser Facility(中央レーザー施設)にある各種レーザー装置を用いた欧州連合における共同利用・共同研究の成果報告会にあたるもので、大学院生から各種研究者が各15分の持ち時間で成果を報告した。ポスターセッションによる発表を中心とした阪大レーザー研の共同研究成果報告会「レーザー研シンポジウム」とは様子を異にしている。2日目の夕刻には英国式のクリスマスディナーで和やかな歓談の時間がもたれた。一番印象深いのは、先にも紹介したP.Norreys教授の閉会のことばで、この共同研究により発表されたNature PhysicsやPhysical Review Letter誌の掲載延べ数が年間20本にも達するとのことである。日本における高出力レーザーを用いた共同利用・共同研究の達成度を鑑みて、新しい指標を得たような気がする。

   

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写真: 会議が開催されたCosner’s houseそばの風景。テムズ河の支流を引き込んだ穏やかな流れに水鳥が群れていた。
   


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