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【活動報告】
研究動向調査報告書:CLEO/Europe 2009参加&ドイツ研究機関訪問
日本原子力研究開発機構 関西光科学研究所
下村拓也

出張期間:平成20年 6月14日〜6月25日
出張先: ドイツ(ミュンヘン・イエナ・ベルリン)

    大阪大学レーザーエネルギー学研究センターと日本原子力研究開発機構との連携融合研究の調査研究として、2009年6月14日から19日の期間、ドイツ・ミュンヘンにて開催されたCLEO/Europe 2009に参加し、諸外国の各研究機関における高強度レーザー開発の最先端の研究成果について、情報収集と意見交換を行った。また、同19日から25日にかけて、マックスプランク量子光学研究所(MPQ)・イエナ大学・マックスボルン研究所(MBI)をそれぞれ訪問し、成果の発表を通じて研究者らとの議論を交わすとともに、施設の見学を行った。
 CLEO/Europe 2009は先進的レーザーとその応用に関する会議で、光学関連の国際会議としては世界最大規模であり、2年毎に開催される。本年度の参加者はおよそ5,000人で、185のセッションが開催された。会議は最大で13のパラレルセッションで進行されたが、それらのうち高強度レーザーや極短パルスレーザーに関するセッションを中心に情報収集を行った。特に、イギリス・ラザフォードアップルトン研究所のグループによる10PW級レーザー開発の進捗報告や、アメリカのマサチューセッツ工科大学のグループによるOPCPAを用いて7fs, 数μJのパルスを1kHzで得ることに成功した例の報告などが興味深かった。
 また、CLEO/Europe 2009は同時に複数の光学関連会議と光学関連製品展示会を併設し、"World of Photonics Congress 2009"として産学一体の大規模なイベントとなっている。この展示会は、4ホールで延べ42,000平方メートルという巨大な会場を埋め尽くすように、1040もの企業・団体が出展しており、大変な熱気であった。会場では各社の様々な製品に関する情報収集を行ったが、特にTRUMPF株式会社をはじめとする在ドイツ・在欧州の各社はこの展示会にかなり力を入れている印象で、工夫を凝らした新製品のデモンストレーションなどが多数見受けられた。

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[写真左] CLEO/Europe 2009の会場であるメッセ・ミュンヘン・インターナショナル
[写真右] 同会議のレセプション会場    

 6月19日に訪問したMPQではDr. L. Veisz、Dr. S. Karschらと面会し、LWS-20と呼ばれる、パルス幅8fs, 10Hzで動作するピーク強度20TW級のOPCPAレーザーなどを視察した。このLWS-20では既に16TWが達成され、>1019W/cm2に集光しての電子加速実験を展開しており、今後はXPWを用いてより高コントラストを目指すとの事である。また、この他にもPW級の数サイクルOPCPAの開発が進められていた。
 6月22日に訪問したイエナ大学ではProf. E. Foerster、Prof. M. Kaluzaらと面会し、現在開発中の高強度Yb:Glassレーザー・POLARISなどを視察した。1PW, 0.03Hzでの動作を目標に開発中のPOLARISは、現時点で5段の増幅器のうち4段目までが完成しており、その4段目の増幅器までを用いたレーザー光を>1019W/cm2に集光して、イオン加速の実験が行われていた。なお、このシステムは近年別の場所から移設されており、建物自体が機器の設置に最適化されている点が特徴的で、機能上・運用上の創意工夫が随所に見られた。
 翌23日に訪問したMBIではProf. P. V. Nickles、Prof. W. Sandnerらと面会し、開発中の高繰り返しYb:YAGレーザーなどを視察した。将来的には1J, 5ps, 100Hzでの動作を目指すこのYb:YAGレーザーは、5段の増幅器のうち3段目まで完成しており、100Hz動作で250mJのパルスエネルギーが得られていた。また、高強度場実験に用いられている100TW級レーザーについても、今後の装置改良についての展望などの情報を得ることが出来た。
 今回のCLEO/Europe参加と各研究機関の訪問では、情報収集や研究者との意見交換、および装置の視察などを通じて、レーザーの要素技術開発およびレーザー利用研究に関する現状を把握することができた。また、先に上げた訪問先のうち、MPQおよびMBIにおいて「Operation and maintenance of the "J-KAREN" laser system」と題した発表を行い、研究者らとの議論の中で多数の有意義なコメントやアドバイスを得た。これらの成果を今後の連携融合事業の研究開発の遂行に活かしていきたい。    

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[写真左] MPIにて発表を行う筆者
[写真右] イエナ大学のPOLARIS/4段目増幅器    



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