PWmonoQ_top_image
  
【活動報告】
研究動向調査報告書:ギリシャ・カルダミリで行われたLaser and Plasma Accelerators Workshop 2009 (LPAW09) に関する報告
日本原子力研究開発機構 関西光科学研究所
小瀧秀行

出張期間:平成20年 6月21日〜6月28日
出張先: Greece(Kardamili)

    ギリシャのKardamiliにて、6月22-26日の1週間、Laser and Plasma Accelerators Workshop 2009(レーザープラズマ加速に関する国際会議)が開催された。本会議は、2年に1回開催され、世界各国のレーザー駆動粒子加速研究に関わる研究者により、レーザーによる電子加速、レーザーによるイオン加速、レーザー加速粒子による光発生に関して議論を行う。今回の参加者は世界各国より100人程度、発表件数は85件であった。本会議では、4つのワーキンググループ(WG1:レーザー電子加速実験、WG2:レーザー電子加速理論、WG3:レーザーイオン加速、WG4:レーザー放射線源)に分かれて議論をした。
 出張者はWG1への参加及び発表を行った。WG1は、レーザー加速電子ビームの安定化、レーザー加速電子の長距離加速、レーザー加速電子ビームのコントロール、レーザー加速電子ビームを用いた放射源がトピックである。出張者は、レーザー加速電子ビームの安定生成及びそのコントロールについて発表を行った。
 レーザー加速電子ビームの安定化に関しては、ターゲットをアルゴンや窒素に変えることによりセルフガイディングが長くなり、安定な電子ビーム生成が可能となるとの話があった。それらの発表のうちの1つは、大阪大学と原子力機構との共同研究による結果であり、出張者もメンバーとなっている。長距離加速に関しては、キャピラリーやガスセルに外部から高電圧を印可し、プラズマのガイドをつくることによるレーザーのガイディングの話があった。高エネルギー・安定電子ビーム発生にはレーザーのガイディングが必要不可欠であり、今後のレーザー加速研究には欠かせない技術であると感じられた。今後、大阪大学と原子力機構との共同研究で、レーザーガイディングについての研究を進めていくこととなっている。レーザー加速電子ビームコントロールに関しては、電子ビームプロファイルコントロールや電子ビームのポジションコントロールの話があった。プロファイルコントロールに関しては、レーザーの偏光方向のコントロールによる方法(JAEA, SLAC アメリカ)と、集光したレーザーの形によりコントロールする方法(RAL イギリス)の2つの方法が報告された。電子ビームポジションコントロールに関しては、ガスジェットターゲットの位置のコントロールによる方法(JAEA)と、レーザーのチャープをコントロールする方法(MPQ ドイツ)の2つの方法が報告された。出張者は、電子ビームプロファイルコントロール及び電子ビームポジションコントロールについて発表を行い、それぞれについて議論を行った(写真)。プロファイルコントロールは世界で2番目、ポジションコントロールは世界初の成果である。また出張者は、電子ビームのパルス幅計測についても発表を行った。電子ビームのエネルギースペクトルから電子ビームのパルス幅を求める方法であり、これにより、4フェムト秒の電子ビームを計測した。これは、方法も4フェムト秒という超短パルス計測も世界初の成果であり、大きな反響があった。質疑の時間には、計測方法やシミュレーション結果との比較(発表内のデータだけではなく、他機関でのシミュレーション結果も含めて)など、活発な議論を行うことができた。レーザー加速電子ビームを用いた放射源に関しては、ベータートロン振動によるX線発生とアンジュレーターを用いたX線発生についての議論を行った。原子力機構でも、ベータートロン振動からのX線発生研究を始めており、本研究に関しても、早急に進めていく必要があると感じた。
 本会議は、議論を主にした会議であり、発表時間の6割が質疑応答の時間となっている。また、それ以外にも議論の時間が設けられている。議論の中で、今後のレーザー加速の方向性についても議論を行った。数年というショートタームでのゴールは、超高速現象の計測、5年以上のロングタームでのゴールは高エネルギー物理への応用であろうとの考えが多数をしめた。
 レーザープラズマ加速に関する国際会議参加で、最新の動向調査や、各国の研究者との意見交換、及び技術開発の現状を把握することができた。今後当グループで実施している研究開発の遂行に活かしていきたい。

   

rpt_090621_1
学会会場となったカルダミリの小学校


rpt_090621_1
質疑応答風景(小瀧)
   


トップへ