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テラヘルツ電磁波産業利用研究会 
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テラヘルツ波技術の現状と展望

斗内政吉
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
tonouchi (at) ile.osaka-u.ac.jp

1.はじめに

テラヘルツ波工学は、近年の光・ナノ技術の発展により技術革新がもたらされ、新しい分野を開拓するものとして注目を集めている。テラヘルツ波は、電波天文や分析科学の分野において、広く研究・利用されてきたが、その対象は限定的なものであった。そのテラヘルツ波技術に、今、新しいセンシング機能が付加され、工業・医療・バイオ・農業・セキュリティなど様々な分野における応用が期待されている。また、情報通信分野においては、利用電磁波のますますの高周波化が進んでおり、数百GHzの無線通信が実現される時期も遠くはない。更に、テラヘルツデバイスの開発も急速に進展し、超高速信号処理技術も利用可能になりつつある。即ち、テラヘルツ波技術は、基礎科学分野のみならず、新機能センシング・情報通信・エレクトロニクス分野において、新規産業の開拓に大きな役割を果たすことが期待され、次世代に不可欠な科学技術と位置づけることができる。

テラヘルツ帯(図1)における技術革新は、@テラヘルツ電磁波、Aテラヘルツフォトニクス、Bテラヘルツエレクトロニクスの三つの主要分野で進んでいる。テラヘルツ電磁波分野においては、フェムト秒レーザーの発展によりテラヘルツ時間領域分光法が開発され、フーリエ成分が数十 GHzから百THzを超える超ブロードバンド極短電磁波パルスの発生と時間領域計測により、新しいテラヘルツ分光・イメージング技術が誕生してきた。フォトニクスからのアプローチとして、フォトミキシングによる光・電磁波変換により、120GHz帯の無線通信技術が開発され、数十Gbpsの情報伝達が実現可能となっている。また、ナノ技術の進展により、高精度に制御された半導体量子井戸構造の作製が可能となり、量子カスケードレーザー(QCL)のテラヘルツ帯発振が実現された。現在では1.6 THz程度までの低周波化が進んでいる。エレクトロニクス研究分野では、化合物半導体集積回路による、MMICや高速AD変換器の開発も進んでおり、また、超伝導単一磁束量子(SFQ)論理回路の開発により、120GHzで動作するシフトレジスターや40 GHz×4=160 Gbpsの光パケットスイッチも実現可能である。今まさに、テラヘルツデジタル信号処理技術を利用できる環境が整い、無線・計測応用など様々な産業基盤が構築されつつある。 このように、様々な研究が、テラヘルツ帯の利用へと方向性を同じくしている。しかしながら、これまでそれらは、個々に進められてきており、早期の利活用実現のためには、テラヘルツ関連研究を統合的に推進し、産学官連携のもと、研究開発を加速させる必要がある。

2.テラヘルツ波工学の発展

赤外からミリ波にかけたテラヘルツ帯には、固体中の光学フォノン散乱・プラズマ周波数、イオン分極・配向分極などの誘電性、超伝導体エネルギーギャップ、分子・固体中の各種振動/分子間相互作用など興味深い物性が存在し、また、バイオ・生体・薬品などの分析には欠かせない領域でもあることから、サイエンスの宝庫として、長年研究されてきた。

国内で本格的なテラヘルツ帯分析研究が始まったのは、1952年、吉永らが遠赤外回折分光装置を開発したことによる。その後フーリエ分光器などへと発展し、現在の分析技術が構築された。しかしながら、計測は容易なものではなく、様々な障害が現在でも存在する。例えば、計測において、テラヘルツ帯の低周波側では、測定時に液体ヘリウム冷却を必要とするボロメータを用いるなど、困難を伴うことが多い。そのような中、フェムト秒レーザーを用いたテラヘルツ波の発生・検出法が開発された。これは、フェムト秒レーザーにより、パルス幅の狭い電磁波パルス(広帯域電磁波)を発生させ、光パルスと連動させることで、時間領域の計測を可能としたもので、テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)と呼ばれる。

THz-TDSは、クラマース・クローニッヒ変換が不要であり、かつ、計測が高速・簡便であることから、広く利用され始めた。また、テラヘルツ波をビームとして取り扱うことで、分光イメージングなどへの期待が高まり、テラヘルツ研究ブームを引き起こした。現在では、時間領域分光だけではなく、テラヘルツ帯高出力光源の開発により、様々な分析機器の開発、情報通信技術への融合、セキュリティ応用など様々な方向に展開を始めている。それに伴い、テラヘルツデバイスなど、基盤技術開発にも活気が出てきている。

3.テラヘルツ基盤技術の現状

3.1 テラヘルツ分光・イメージング分析技術

 テラヘルツ電磁波を用いた分光・イメージング技術が急速に進歩している。まず、注目すべき新技術は時間領域分光法である。THz-TDSシステムの概念図を下図に示す。主な要素は、フェムト秒レーザー、テラヘルツ波発生素子、テラヘルツ波検出素子、時間遅延ステージである。テラヘルツ波発生光源として、半導体光伝導スイッチ、半導体基板、非線形光学結晶などが利用されている。テラヘルツ波発生機構はそれぞれ異なるが、フェムト秒レーザーが入射することで、テラヘルツ電磁パルスが放射され、空間を伝播して、検出器に到達する。光が到達したときだけ動作する検出器には、分岐された検出パルスが導かれ、その光に時間遅延を与えることで、時間領域波形をとらえることができる。検出方法として、代表的には、光伝導スイッチおよび電気光学(EO)結晶の二通りが利用され、それぞれに特徴がある。

開発要素としては、光源の高出力化、広帯域化、全反射分光(ATR)、1.5μmフェムト秒レーザー利用、ダイナミック分光システム開発[23]などがある。下図にp-InAs基板およびDAST結晶から放射されるテラヘルツ波スペクトルの励起波長依存性を示す。検出器励起用にも同じ波長を用いており、1.5μm帯レーザーを用いて約8THzまでの帯域を有するTHz-TDSのシステム開発が可能である。

水分を含む試料を評価するためには、透過型TDSでは、吸収が大きすぎるために困難である。その問題を解決する方法として、テラヘルツ時間領域全反射減衰分光(THz-ATR)法が開発された。テラヘルツエバネッセント波用いるもので、バイオ系試料の評価にブレークスルーを与えるものとして、開発が進められている。

THz-TDSは分光法として有用であるのみならず、イメージング技術としても期待されている。テラヘルツビームを走査することで、イメージング分光が可能であり、開発が精力的に進められている。開発要素には、高画質化、高速化、コンパクト化、高分解能化などが挙げられる。下図に、THz-TDSイメージング装置による観測例を示す。封筒内のカッターの刃が明瞭に観測されている。更なる高分解能化のアプローチとしては、SPM(走査型プローブ顕微鏡)と融合させることで、ニアフィールド型THzイメージングシステムの開発も精力的に取り組まれている。

テラヘルツ波発生の機構としては、パラメトリック発生と差周波発生がある。パラメトリック光源では、ニオブ酸リチウム結晶などの非線形結晶に光強度の強いパルス励起光を入射させ、光学活性フォノンとの相互作用により、テラヘルツ光とアイドラ光に分離される原理を用いている。最近開発された光注入型THz波パラメトリック発生器(IS-TPG)は、フーリエ限界の単色性を有する常温動作の広帯域波長可変THz波光源であり、ピーク出力も数百mW(エネルギー出力: 1 nJ以上)を有しており、今後種々の応用が期待される。差周波発生の原理は、波長の少し異なる光源を非線形結晶に導入し、その2次の非線形効果を通して励起される差周波の項がテラヘルツ光源となるもので、最近では、(財)半導体研究所が、GaP半導体基板を用いて、高出力テラヘルツ光源の開発に成功している。フェムト秒レーザー光源を用いた場合、パルス自身の波長の広がりから、差周波に対応するテラヘルツ波の発生も可能であり、THz-TDS 光源として広く用いられている。代表的なものに、ZnTe, GaSb, GaAs, GaP,DASTなどがある。テラヘルツ光源として、まだ探索的要素が大きく、新たな誘電体結晶・有機結晶光源が誕生する可能性は大きい。

3.2 テラヘルツ波フォトニクス・エレクトロニクス

 テラヘルツ光源として、電子デバイスからのアプローチも精力的に進められている。NTTの石橋らが開発した単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)は、光応答が極めて高速で、フォトミキシングにより高出力テラヘルツ波発生が可能となっている。UTP-PDとその応用については、本特集号で報告されている。

 注目されているデバイスとして、テラヘルツ帯量子カスケードレーザーがある。複雑な量子井戸構造を作製し、ミニバンド間の遷移を利用するもので、緩和エネルギーが数meVと、テラヘルツ帯の発振が可能である。開発課題は、低閾値化、発振の低周波化、高温動作化などが挙げられ、欧米で精力的に研究されている。

 

その他、共鳴トンネルダイオード(RTD)、タンネットダイオード、2次元プラズモン共鳴型フォトミキサ、p-Geレーザーなど様々なテラヘルツ波デバイスが研究されている。最近、浅田らは、RTD発振の3倍波を取り出し、1.02THzの光源開発に成功した。一方、テラヘルツ波の検出技術としては、時間領域用として、低温成長GaAs、EO効果などが用いられており、材料探索を含んだ高感度・広帯域化が課題となっている。また、非時間領域に対しては、様々なデバイスがある中、ボロメータ、焦電素子、超伝導検出器、ならびにテラヘルツ帯単一光子検出器などが重要なデバイスである。

 

その様な中、単一電子トランジスタを用いた量子ドット型検出器で、波長100〜200μm程度のTHz電磁波に対して、単一光子検出が実現されている。テラヘルツ科学の探求ならびにそれを支える技術開発につながる重要な成果として、その実用化が期待される。              

3.3 テラヘルツ周辺技術

  光テラヘルツ波変換用光源に用いられるレーザーも重要な開発要素である。フェムト秒レーザーとしては、コンパクト・高安定性の観点から、ファイバーレーザーの性能が急速に進歩しており、テラヘルツ波発生用として期待されている。また、チタンサファイア系フェムト秒レーザーでは、短パルス化が研究課題であり、時間領域法における超広帯域化の基盤技術となっている。  

テラヘルツ無線やテラヘルツ計測応用の基盤技術としてテラヘルツ信号処理デバイス開発が重要である。InP系化合物半導体では、遮断周波数が500GHzを超え、その集積化も試みられており、120GHz無線通信用MMIC等の様々な高速回路が試作さている[。

  超高速集積回路の発熱問題を解決するものとして、超伝導単一磁束量子論理回路の開発もキューピッチで進められている。動作周波数120GHzを実現した8ビットシフトレジスタも実現されている。その他にも、7220個の接合を用いたマイクロプロセッサーは21GHzでの完全動作が達成されているなど、サブテラヘルツ領域の電気信号処理・計測技術・無線システムなどへの応用が展開可能となってきた。

4.テラヘルツ波応用研究開発の現状

4.1 応用が見込まれる分野

 

テラヘルツ技術が切り拓く応用分野として、主要3分野、テラヘルツ波・テラヘルツフォトニクス・テラヘルツエレクトロニクスの融合により、情報通信・生命・医療・安全・健康・産業・環境・宇宙・科学など幅広い展開が期待され、主な応用は、分光分析分野と情報通信分野に大別できる。分析応用の観点から、テラヘルツ波は、様々な物質を透過し、X線・レーザー光などと比較して安全であり、物質固有の透過・吸収・反射特性(指紋スペクトル)を示すなど、様々な利点を有している。分析分野では、生体・高分子・電子材料など様々な物質の分光分析、ならびにイメージング技術と組み合せた医療診断・隠匿物検査・バイオメトリクスなどへの応用が研究されている。IT分野では、今後ますます発展が要望さるユビキタスネットワーク社会における主要技術として、無線技術や周辺の高速MMICや論理回路などが不可欠な存在となる。

 

4.2 分光分析・イメージング応用

THz-TDSの実現により、テラヘルツ帯における複素屈折率・複素誘電率・複素導電率などが容易に計測・評価できるようになり、様々な物質におけるテラヘルツ帯固有の物性が明らかになりつつある。最近では、米英国とわが国において、相次いでTHz-TDSシステム、テラヘルツ分光装置、イメージングシステムの商品化が始まっており、ますます普及する環境が整いつつある。

 

分析応用として、まず電子材料・工業材料評価への応用が挙げられる。半導体の電子密度、移動度、導電率、キャリア寿命などを非接触で評価することができ、ウェファー評価装置への応用が期待される。様々な電子材料の評価においても新しい物性が次々と明らかになっている。また、工業用材料の例として、ナノコンポジットなどの分子間相互作用の研究に用いることができ、波長を越えたナノ材料の分析にも威力が発揮されることが明らかとなっている。

 

 

その他、産業分析応用が期待される例として、レーザーテラヘルツエミッション顕微鏡(LTEM)を用いたLSI不良箇所特定装置がある。LTEMはフェムト秒照射により様々な物質からテラヘルツ波が放射されることを利用して、物質のテラヘルツ波放射イメージングを得るもので、分解能は光のビーム径で決まるため、数百ナノメートルの構造体まで評価できることが期待される。このLTEMを用いて、例えばLSIの良品と不良品のイメージを比べることで、TEM分析時に必要な不良箇所の特定などを行うことができると期待されている。

 次いで、医療・バイオ・医薬品分析などへの応用も精力的に研究されている。テラヘルツ帯の情報には水素結合状態や分子間相互作用が含まれることが指摘されており、様々な分子の識別に利用できる可能性がある。例えばDNAの一本鎖/二本鎖の判別ができることが報告されており、現在ではDNAチップへの応用研究が進められている。また、生細胞の水分量にも敏感であることから、がん細胞イメージングへの応用も広く研究されている。特に、皮膚がん検査への有用性が議論されており、将来的にはがん細胞のオンサイト診断などへの応用も期待されている。また、アミノ酸、糖、塩基など生体関連物質はテラヘルツ帯で特徴的な吸収を示すことが知られており、医薬品分析応用も期待されている。これまでの分析ツールでは困難な多形分析も可能であり、また、異物検査や錠剤のコーティング評価など様々な応用研究も進められている。

テラヘルツ波は、安全・安心社会へのキーテクノロジーとしても不可欠である。まず、禁止薬物・危険物などの非破壊・非侵襲検査応用が期待されている。封筒内に入れられたコカインなどの検出が可能であり、郵便物検査の開発などが取り組まれている。また、水関連検査にも威力を発揮し、食品や農作物の管理にも応用が検討されている。欧米においては、THz-TDSやテラヘルツカメラによる、空港での隠匿物検査、屋外での危険物探知、個人照合技術の開発も精力的に行われている。

4.3 情報通信応用

 より高速で、より大容量で、より自由な情報通信環境実現に向けて多くの努力がなされている。無線LANはUWB(Ultra-Wide Band)や60GHz無線などにより1Gbpsの通信速度が実現されようとしており、10Gbps無線開発に向けた研究開発も開始されている。図15に示すように、将来、光ファイバ基幹ネットワークと無線通信システムのシームレスに連結されるような環境へと向かいつつあり、新しい応用分野を開拓するものと期待される。例えば、ファイバ敷設が困難なビル間通信、災害時の移動大容量無線、遠隔医療用高画質伝送用無線通信、映画などのダウンロード用ホットスポットなどの実用化が望まれる。テラヘルツ無線開発に障害となるのは、水蒸気による電磁波の吸収である。400GHzから10THz程度までは、大きな吸収帯があり、中長距離無線には適さない。現在までに、UTC-PDとフォトミキシング技術を用いて、120GHz帯無線のフィールド実験を始めており、10Gbpsの無線開発が進んでいる。屋外の短距離の無線では、300GHz程度までが現実的な無線通信帯であり、40Gbps程度までは実現される可能性が高い。一方、屋内の短距無線等では、THz-QCLの出現により、あまり制限を受けずに利用可能範囲が広がる可能性がある。

光通信の分野では、10GbpsのEthernetが有線系LANとして普及が始まっており、それらの進展に伴って、基幹ネットワークでは、毎秒数百Gbpの伝送量実現を目指して、開発が進んでいる。近い将来、基幹ネットワークノードやサーバーにおける大容量情報処理が不可欠であり、そのためにはテラヘルツデバイス・集積回路の実現が重要な鍵を握る。現在では、その様な開発に向けて、化合物、半導体集積回路による高速ADCや、SFQ回路による光パケットスイッチの開発が進められている。SFQによる光パケットスイッチは半導体を用いるより低消費電力であり、システムとしての大きさも気分けてコンパクトに仕上げることができる。まだ、半導体論理回路では対応が難しいとされる160GHz×1の開発も視野に入ってきた。最終的にはその様な超伝導デバイスと化合物半導体デバイスのハイブリッド化システムが、次世代の光情報通信を支えるも物となるであろう。

4.4 その他基礎科学応用やシナジー効果など

古くからテラヘルツ分野を牽引してきた分野として、宇宙・天文研究におけるテラヘルツ技術がある。ALMA計画におけるテラヘルツ検出器の開発は、世界的課題であり、着々と進められている。SMILESプロジェクトにおける衛星からのテラヘルツ帯地球環境計測、ならびにASFRO-Fにおけるテラヘルツイメージングアレーの開発など、大きなプロジェクトが推進されている。天文・宇宙研究におけるテラヘルツ応用は、国内では産業分野とは認識されていないが、世界的に見ると、既に巨大なマーケットが存在する産業基盤である。また、テラヘルツ情報通信との融合による新しい研究開発分野の創成も期待され、センシングと無線を組み合せたバイオメトリクス技術や、センサネットワークの新しい構築など分野融合によるシナジー効果も生まれるであろう。

5 展望と課題

5.1 テラヘルツ技術が拓く未来像

テラヘルツ技術が拓く応用はきわめて広範囲であり、様々な学問の上に成り立つ。下図に展望のイメージをまとめる。重要な点は、テラヘルツ波技術は、ナノ技術と同じように、様々な分野を横断的に結ぶ技術であり、様々な分野で新しい科学と産業を創製すると期待される。分光分析技術は、研究機器・セキュリティー・バイオメディカル・農業/食品・半導体産業・環境応用などの分野で、それぞれのアプリケーションに適した機器を開発することで、新しい産業応用が開拓される。

5.2 取り組むべき課題

テラヘルツ産業を展開するに当たっては、様々な研究課題が存在する。テラヘルツ光源では、電気的発生では、低周波から高周波に向かって周波数の-2乗に比例し減少し、光デバイスでは、高周波から低周波に向かって同様に、周波数の2乗に比例して減少しており、特に0.5-30 THz帯域の高周波デバイスの開発が重要である。一方、テラヘルツ帯の計測機器の開発は、国内ではほとんど実施されていないことから、テラヘルツ波工学の発展には、計測機器開発も重要である。また、通信応用やセンシング・セキュリティ応用にはテラヘルツ電磁環境両立性(EMC)研究や標準化が不可であり、早期の着手が望まれる。更に、テラヘルツ帯における分子間相互作用など、これまで明らかにされていない物理現象に関する情報が秘められており、応用展開に向けて様々な物質のテラヘルツ物性データベースを構築することも必要不可欠である。その他、重要な課題としては、高感度テラヘルツ検出デバイス・テラヘルツカメラなどの開発、量子カスケードレーザーのチューナブル化・高出力化・低閾値化・高温動作化、集積回路の高密度・低消費電力化、などが挙げられる。また、加えて、様々なシナジー効果から、新しい応用の誕生も大いに期待される。欧米に比べて進んでいる研究課題も多く、また、テラヘルツ波・テラヘルツフォトニクス・テラヘルツエレクトロニクス分野を総合的に推進するアイディアは日本独自ものであり、世界をリードする研究分野を構築できる環境にある。しかしながら、テラヘルツ研究分野は未成熟な分野でもあり、探索的・挑戦的要素も多く含むことから、基礎科学・基盤技術育成と応用分野開拓のため、産学官が協調して研究開発プロジェクトを進めることが重要である。

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