ごあいさつ
「熱い冬」「燃える夏」という言葉が生まれるほど、地球温暖化の影響を体で感じるようになってきました。最近、夏には多くの方が暑さで亡くなるという非常事態も起き、まさに地球温暖化対策は待ったなしとなっています。核融合は、温暖化ガスを排出せず、なおかつ放射性廃棄物の排出量が原子力にくらべて圧倒的に少ないことから、多くの人が人類の最終エネルギー源として期待を寄せています。
この期待に応えるべく、国際熱核融合実験炉であるITER(International Thermonuclear Experimental
Reactor)の建設がフランスのカダラッシュで始まりました。レーザー核融合については、米国の国立点火施設NIF(National
Ignition Facility)が完成し、人類初の制御された核融合点火・燃焼を目指す実験が始まります。さらに、核融合と核分裂を組み合わせたレーザー核融合炉を2020年頃に実現する、との計画が発表され、オバマ大統領の新エネルギー戦略に沿ったものとして、世界に大変な衝撃を与えています。
一方、レーザーエネルギー学研究センターは、全国の研究者の方々との共同利用・共同研究により、星の内部にしか存在しないような高温で高密度の極限状態をつくりだし、実験室宇宙物理、テラヘルツからガンマ線までの光・量子発生と応用、相対論核科学などの「高エネルギー密度状態の科学」を開拓するとともに、最先端のレーザー技術により半導体製造技術などの先端産業の発展に貢献しています。
これらの学術・技術基盤の上に、新方式の「高速点火」レーザー核融合を推進し、欧米の方式のの10分の1の規模で、コンパクトで経済的な核融合炉の開発を目指しています。この計画は「高速点火実証実験FIREX(Fast
Ignition Realization EXperiment)計画」と名付けられており、その第1期では全世界の電力の1000倍ものレーザーパワーを核融合燃料に瞬時につぎ込むことにより、高速点火方式が本当に実用になるのかを実証します。この実験で5千万度という点火温度を達成し、FIREX第2期計画を早期に開始すれば、わが国が米仏と同時期により優れた方式による核融合点火を実現することも、決して夢ではないと思います。
これから数年の間にNIFによる核融合点火の実証と、FIREXによる高速点火の原理的実証の2つがそろいます。核融合点火の実証は、宇宙開発におけるアポロ11号が人類初の月面着陸に成功したときと同じように、世の中のレーザー核融合と、実験室宇宙物理などの関連研究に対する見方を根本的に変えるものと思われます。「もっと光を」を合い言葉にセンターのメンバー最善を尽くしますので、これまでにも増して皆様のご指導、ご支援をお願い申し上げます。またこのエキサイティングな分野に、一人でも多くの方が参入されることを期待しております。
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター センター長
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