No.6
高強度レーザープラズマの応用研究を目指して
京都大学化学研究所 先端ビームナノ科学センター
阪部 周二

 

 本年4月、京都大学化学研究所に先端ビームナノ科学センターが発足いたしました。化学研究所は1926年に「化学に関する特殊事項の学理およびその応用を究める」を理念に我が国最初の大学附置研究所(現在31研究領域)として発足しましたが、独立法人化に際して、5研究系(物質創製化学、材料機能化学、生体機能化学、環境物質化学、複合基盤化学)3センター(元素科学国際研究センター、バイオインフォマティックスセンタ?、当センター)に改組されました。先端ビームナノ科学センターは前身の附属原子核科学研究施設と構造解析基礎研究部門TUが連携して、各種ビームの融合科学の実現に向けて設置されました。センターは4研究領域(粒子ビーム科学、レーザー物質科学、複合ナノ解析科学、構造分子生物科学)で構成されています。センターを構成する加速器科学者、レーザー科学者、電子顕微鏡科学者、X線解析科学者が協力し、加速器、高強度レーザー、電子顕微鏡、X線解析装置といったインフラを最大限活用し、粒子、レーザー、電子、X線の各ビームの有機的な融合により、物理、化学、生物分野の各視点から「ナノ時空間」の現象観測と制御の学術を創成することを目標にしています。
 筆者が担当するレーザー物質科学研究領域ではレーザーと物質(原子、分子、電子、生物、など)との相互作用の物理を調べ、その様々な分野への応用を探ることを目指し研究を立ち上げております。化学研究所内では大変多岐に渡った分野での研究活動が行われており、その分野の広さから見ますと、まだまだレーザーの潜在能力はあるように思えます。また、レーザーに限らず、レーザー生成放射線(電子線、X線、イオン線、陽電子線など)の応用の可能性も拡がります。センターの粒子ビーム、電子顕微鏡、X線構造解析の専門家と連携して、レーザープラズマの応用を探究したいと考えております。
 TW-PWレーザープラズマの物理の研究において、本学術創成プログラムに参加させて頂いておりますが、レーザー核融合ならびに高レーザーエネルギー学の大阪大学、高強度レーザー科学の原研関西光量子センターとともにレーザープラズマ応用の当センターとなるべく活動したいと考えております。みなさまのご支援よろしくお願い申し上げます。

化学研究所に完成したレーザー科学棟(左はイオン線型加速器棟)
  今秋に高強度短パルスレーザー(T6レーザー)が設置され、来年からの稼動を目指してい  ます。(メンバーは左から、橋田助手、白井理学研究科修士院生、筆者、香川阪大工学研究科博士院生、清水助手)

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