超短パルスレーザー加工によるナノマテリアル創製とプラズモニクス応用

超短パルスレーザーは、フェムト秒からピコ秒程度の非常に短い時間幅をもつレーザーです。材料に照射すると、熱が周囲に広がる前にエネルギーを集中して与えることができるため、熱影響を抑えた高精度加工が可能です。また、多光子吸収などの非線形過程を利用することで、透明材料やワイドバンドギャップ材料の微細加工にも応用できます。 本研究では、超短パルスレーザーの高い加工精度とコヒーレンスを利用し、干渉パターンに対応したナノ周期構造を一括で形成する技術を開発しています。さらに、加工対象を薄膜材料にすることで、局所的な溶融、変形、転写を制御し、ナノウィスカー、ナノドロップ、ナノドット配列など、従来手法では作製が難しい新しいナノマテリアルの創製を進めています。 これらの構造は、プラズモニクス、表面増強ラマン散乱、メタサーフェス、光制御デバイスなどへの応用が期待されます。
周期配列カイラル構造の一括作製に関する論文がScientific Reports誌に掲載されました。

研究内容の概要

1.干渉フェムト秒レーザーによる薄膜加工を用いた新ナノマテリアルの創製

フェムト秒レーザーのナノ加工能力、コヒーレンス、局在的な熱プロセスを組み合わせ、薄膜材料から新しいナノ構造を作製しています。 複数のレーザービームを干渉させることで、光の強度分布を周期的に制御できます。この干渉パターンを材料に転写することにより、ナノメートルからマイクロメートルスケールの周期構造を広い範囲に一括で形成できます。 特に、金属薄膜を用いた加工では、レーザー照射によって生じる局所的な溶融、表面張力、再凝固の過程を利用して、ナノウィスカー、ナノドロップ、ナノドットペアなどの微細構造を形成できます。これにより、プラズモニクスやナノフォトニクスに有用な人工ナノ構造の作製を目指しています。

干渉フェムト秒レーザー加工によるナノマテリアル創製と応用例

周期配列カイラル構造の一括作製に関する論文がScientific Reports誌に掲載されました。

あらゆる光パターンにおける光輻射圧分布の計算が可能に Scientific Reports

2.超短パルスレーザー干渉加工装置の開発

フェムト秒レーザーはパルス幅が非常に短く、光の波列長も限られています。そのため、安定した干渉パターンを形成するには、光路差やビーム配置を精密に制御する専用の光学系が必要です。 本研究では、透過型回折光学素子と縮小光学系を組み合わせた、超短パルスレーザー用の干渉加工装置を開発しています。レーザー光を回折光学素子で複数のビームに分割し、それらを加工位置で重ね合わせることで、周期的な干渉パターンを形成します。 この方式では、複雑な光学調整を簡略化しながら、広い領域に高精度な周期構造を一括形成できます。レーザー波長程度の微細周期をもつ構造を、単一ショットまたは少数ショットで作製できる点が大きな特徴です。


透過型回折光学素子と縮小光学系を用いたフェムト秒レーザー干渉加工装置

3.新ナノマテリアルの応用:プラズモニクスとメタマテリアル

干渉レーザー加工で作製したナノ周期構造は、材料そのものの性質だけでなく、構造の形状、周期、配列によって光応答を制御できる点に特徴があります。このような人工的に設計されたナノ構造は、プラズモニックデバイスやメタサーフェス、メタマテリアルへの応用が期待されます。 たとえば、金属ナノ構造では、光と電子の集団振動が結合した局在表面プラズモンを利用できます。これにより、光電場をナノスケールで増強し、表面増強ラマン散乱、高感度センシング、光制御素子などへの展開が可能になります。 また、キラル構造や周期配列構造を形成することで、偏光依存性、旋光性、異方的な光応答など、通常の材料では得にくい機能の発現も期待されます。本研究では、レーザー加工プロセスと光学設計を組み合わせ、機能性ナノ構造の創製と応用を進めています。

研究成果の発表と連携

本研究の成果は、国内外の学会、学術論文、講演会などを通じて発表しています。特に、学生による研究発表にも力を入れており、若手研究者が自ら成果を発信する機会を大切にしています。また、企業や研究機関との共同研究・技術相談にも取り組んでいます。超短パルスレーザー加工、干渉パターン制御、ナノ構造形成、プラズモニクス応用に関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。

受賞

研究成果の発表と連携

本研究の成果は、国内外の学会、学術論文、講演会などを通じて発表しています。特に、学生による研究発表にも力を入れており、若手研究者が自ら成果を発信する機会を大切にしています。

また、企業や研究機関との共同研究・技術相談にも取り組んでいます。超短パルスレーザー加工、干渉パターン制御、ナノ構造形成、プラズモニクス応用に関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。

主な成果・受賞

・レーザー学会 優秀論文発表賞
 「マルチスポット照射を用いた超短パルスレーザー誘起結晶化技術の開発」
 藤井紀文,高橋秀実,中田芳樹,吉川洋史(2026年)

・日本結晶成長学会 講演奨励賞
 「結晶化を促進するレーザー誘起キャビテーションバブルの空間配置の解明」
 藤井紀文(2025年)

・令和4年度 Best Presentation Award, FrontierLab@Osaka Univ.
 Hendrik Jackel(2022年)

・令和2年度 菅田-Cohen賞
 小坂悠起(M2、2021年)

・Best Paper Award in 2020
 “Nanodot array deposition via single shot laser interference pattern using laser-induced forward transfer”
 Yoshiki Nakata, Eiki Hayashi, Koji Tsubakimoto, Noriaki Miyanaga, Aiko Narazaki, Tatsuya Shoji and Yasuyuki Tsuboi(2021年)

・Institute of Laser Engineering Best Student Poster Award
 “Fabrication of nanostructures in hexagonal lattice by using six-beam interference pattern of femtosecond laser”
 Masataka Yoshida, Kazuhito Osawa, Yoshiki Nakata, Noriaki Miyanaga(2017年)

・レーザー学会 業績賞・論文賞 オリジナル部門
 「コヒーレントビームの干渉パターン制御とナノ周期構造の形成」
 中田芳樹(2016年)

・電気学会 優秀論文発表A賞
 「酸化亜鉛ナノワイヤ成長制御へのレーザプロセスの応用」(2014年)

・レーザー学会九州支部 学生発表賞
 「レーザー干渉光を用いたマイクロ周期ZnOナノ結晶の作製」(2014年)

・応用物理学会 第1回JSAPフォトコンテスト 優秀賞
 「金の周期ナノドロップ」
 中田芳樹(2013年)

・SPIE Best Student Poster in Photonics West 2011 LASE 7920 conference
 “Generation of complicated or duplicated structure by interfering femtosecond laser processing of metallic thin film”
 Takuya Hiromoto(2011年)

・レーザー学会 進歩賞
 「積層MEMSのためのパルスレーザー支援デブリフリー低ストレスダイシング技術の開発」(2009年)

・電気学会 優秀論文発表賞
 “Debris-Free Laser-Assisted Low-Stress Dicing for Multi-Layered MEMS”
 Yusaku Izawa, Yosuke Tsurumi, Shuji Tanaka, Hideyuki Kikuchi, Keichi Sueda, Yoshiki Nakata, Masayoshi Esashi, Noriaki Miyanaga, Masayuki Fujita(2009年)

・電気学会 優秀技術活動賞 技術報告賞
 「最新レーザプロセシングの基礎と産業応用」
 中田芳樹 共著・章担当(2008年)

・レーザー学会 奨励賞
 干渉フェムト秒レーザーを用いた薄膜加工によるナノマテリアル創製研究に関する一連の業績(2005年)

・船井情報科学振興財団 奨励賞
 中田芳樹(2005年)

・電気学会 優秀論文発表賞
 「干渉フェムト秒レーザー加工を用いた新ナノマテリアルの創製」
 中田芳樹(2005年)

・レーザー学会 学術講演会第20回年次大会 優秀論文発表賞
 「レーザー誘起転写法を用いた微粒子輸送法の開発」(2000年)

・応用物理学会 講演奨励賞
 「レーザー誘起転写法プロセスの顕微レーザー分光法を用いた測定」(2000年)