グループの概要

密度や温度が高い物質状態である "高エネルギー密度プラズマ" の物理について、理論・シミュレーション研究を行っています。
プラズマは、荷電粒子が集団で運動する多体系で、宇宙に存在する原子の99%以上はプラズマ状態にあると言われています。プラズマは電磁場を生成しながら、中性の物質では見られない様々な現象を生み出します。プラズマ物理の理解は、宇宙・天文物理や物質科学においても重要であり、また核融合や光量子ビーム源などの先進技術にも欠かせません。

当研究グループでは、プラズマの中でも特にエネルギー密度（密度・温度）が高い、"高エネルギー密度プラズマ" を対象とした研究を展開しています。例えば、太陽中心のような、密度が固体の約1000倍、温度1500万度の核融合プラズマや、粒子の平均エネルギーがMeVを超えるような相対論プラズマなどが挙げられます。このようなプラズマは、大型の高強度レーザー装置を用いて作り出すことができます。作り出されるプラズマは、非線形性・非平衡性が極めて高く、開放系として様々な構造を生み出します。私たちは、高エネルギー密度プラズマにおける複雑現象の物理を解明するため、数値シミュレーションや理論モデルの構築を行っています。

この研究グループは、大阪大学大学院理学研究科物理学専攻の協力講座です。研究室は大阪大学レーザー科学研究所内にあり、研究所の理論グループや、国内外の大型レーザー装置で行われる実験研究と協力しながら、研究を行っています。
興味のある方は岩田 (iwata.natsumi.ile(at)osaka-u.ac.jp) までご連絡ください。

ニュース・お知らせ

  • 日本物理学会第80回年次大会において、D1の奥田さんが日本物理学会学生優秀発表賞を受賞しました。(領域2, 対象発表：高強度レーザーによる高密度プラズマ加熱における高速熱輸送の物理) (2025.10)

  • レーザー駆動イオン加速のエネルギー変換率に関する論文が掲載されました。("Energy partition of fast ions and fast electrons in a foil plasma expansion under continuous irradiation of kJ petawatt laser light” Frontiers in Physics 13, 1666941 (2025))(2025.10.03)

  • アジア太平洋物理学会プラズマ分科会の国際会議 AAPPS-DPP2025 にて、奥田さん(D1)、岩田教授が招待講演を行いました。(福岡, 2025.09)

  • 大阪大学大学院理学研究科のインターナショナルサマープログラム(ISP)生としてHe Min-Fangさん（国立清華大学）が研究室に約1ヶ月滞在し、コースワークを行いました。(2025.07.17-08.27)

  • D1の奥田さんがサマーインターンシップ生として米国ローレンスリバモア国立研究所に滞在しました。(2025.07-08)

  • 大阪大学大学院理学研究科・フォアフロント研究センターが開催する南部コロキウムにて、岩田教授がプラズマ物理と核融合の研究に関する講演を行いました。(阪大豊中キャンパス, 2025.05.08)

  • 高エネルギー密度科学に関する国際会議 HEDS2025 にて、奥田さん(D1)、岩田教授が研究発表を行いました。(横浜, 2025.04)

  • 大阪大学大学院理学研究科物理学専攻の大学院入試説明会が開催され、当研究グループの紹介を行いました。(阪大豊中キャンパス, 2025.04.19)

  • https://www.phys.sci.osaka-u.ac.jp/ja/grad/undergraduate_exam.html 次世代挑戦的研究者育成プロジェクト生に、D1の奥田さんが採用されました。(2025.04)

研究内容

高強度レーザー光とプラズマの相互作用、それにより生み出される高エネルギー密度プラズマについて広く研究を行なっています。数値シミュレーションおよび、粒子描像から流体描像までの理論によって、複雑現象の物理を解明します。大阪大学レーザー科学研究所の理論グループと合同開催の定例セミナーで議論をしたり、国内外の大型レーザー装置で行われる実験研究とも協力しながら、研究を行います。例えば、最近は以下のような研究を進めています。


高強度レーザーが作り出すプラズマ中での高エネルギー粒子加速の研究
高強度レーザー光の電場の強さは、およそ1012 V/mにおよび、光に照射された物質は瞬時に電離しプラズマ状態となります。光電磁場にさらされたプラズマ中の電子は強い加速を受け、プラズマ中に様々な流れや波を励起します。このときプラズマは熱平衡から遠い状態にあり、非平衡開放系として現象が発展していきます。プラズマから発生する高エネルギー粒子や高輝度輻射は、光量子ビーム源として応用されます。また、レーザー生成プラズマ中で起こる電磁場を介した衝撃波形成や粒子加速現象は、宇宙線の加速機構とも類似し、統計理論などによって共通の物理が議論されています。当グループでは、国内外の高強度レーザー実験研究とも協力し、粒子加速の物理を明らかにする研究を進めています。

高強度レーザーによる高密度・高温プラズマ形成過程の解明
光のエネルギー密度がギガバール（10億気圧）を超える高強度レーザーが世界的に発展しています。このようなレーザー光を物質に照射することで、レーザー光と同程度の高いエネルギー密度をもつプラズマを生成することができます。高密度のプラズマ中では温度が1000万度（1 keV）を超える熱波が伝播していきます。同時に、プラズマの集団的振る舞いと、粒子衝突によるランダムな振る舞いの両方が影響し合い、プラズマ内部に複雑な磁場構造が発展していきます。光照射下でのプラズマ加熱の物理は、物質科学や核融合などの応用において重要であり、また星内部のエネルギー輸送にも関係します。当グループでは、ミクロな荷電粒子の運動からマクロな高温・高密度プラズマ形成までをつなぐ物理の理解を目指した理論・シミュレーション研究を進めています。

メンバー

岩田夏弥 Natsumi IWATA 教授  researchmapへのリンク
奥田直樹 Naoki OKUDA 大学院生(D1), 次世代プロジェクト生, オナー大学院プログラム履修生
このグループは2025年に開設した新しい研究グループです。大阪大学レーザー科学研究所の他の理論グループとの協力、交流のもと研究を行っています：
THRグループ 千徳靖彦教授，高木悠司特任研究員，柳川颯斗(D1)，Ethan Dowley(M1)，LAPグループ 佐野孝好准教授　ほか

アクセス

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-6
大阪大学レーザー科学研究所
研究棟（I棟）4階 R415, R410

キャンパスマップ、交通案内はこちら
https://www.ile.osaka-u.ac.jp/ja/access/index.html

連絡先：iwata.natsumi.ile(at)osaka-u.ac.jp（岩田夏弥 教授）
(at)は@に置き換えて下さい。

リンク

大阪大学
レーザー科学研究所
理学部・理学研究科  物理学専攻