レーザーによるEUV光発生に関し、その理論・シミュレーションデータベースを得るためには、レーザー照射によって発生するプラズマの諸特性を定量的に評価する必要があります。照射パラメータ・ターゲット材質等を数多く変化させてパラメータ依存性を総合的に得るためには、将来の光源設備に近い規模の装置(照射強度1010〜1012
W/cm2程度)で集中的にデータ取得を行うことが求められます。またEUV発生実験を行うとともに、EUV光関連の計測器の整備や較正なども重要なテーマとなっています。加えてリーディングプロジェクトの関連大学・研究機関も使用することになるため、使いやすさを考慮に入れた装置であるべきです。
このような背景のもと、EUV光源開発を目的とした共同利用設備の整備を行いました。設備は大きく3つに分かれており、・EUVデータベース用レーザー装置、・レーザー照射施設(ターゲットチェンバー関連)、・EUVターゲット製作施設から成っています。
EUVデータベース用レーザー装置の発振器・増幅器から出射したレーザー光(波長1.06 mm)は、波長変換部を通りw光から4w光の高調波が選択され、ターゲット照射エリアへと運ばれます。ターゲット照射のためのターゲットチェンバーは2基配置されており、照射レンズのF値以外はほぼ同様の設計になっています。レーザー光は蹴り出しミラーによっていずれかのターゲットチェンバーに集光されるようになっており、照射実験と並行して別の実験の準備がもう一方のターゲットチェンバーで出来るようになっています。またはそれぞれのターゲットチェンバーを実験テーマによって専用の装置にすることも可能であり、その点でも自由度を持たせてあります。
それぞれの照射装置には照射エネルギー、照射パターン、パルス波形、集光パターン等を計測するモニター系が設置されています。ターゲットチェンバーにはターゲット導入装置が設置されています。ターゲット導入装置はシングルショットを想定した固定式の支持装置となっているが、繰り返し動作試験や高速供給などのテストも行われる事が考えられるため、取り外し・交換が可能です。エネルギーモニター、波形モニター、照射パターンモニターはターゲットチェンバー上流の除振台に設置されており、モニター系とともにレーザー集光性能向上のためのスペーシャルフィルターを配置しています。これらのモニター系は1台のパソコンでデータ取得・記録が可能になっています。加えてターゲット設定装置、真空制御版なども集中して設定・制御できるシステムになっています。
プラズマ計測に関しては、必要な計測器をターゲットチェンバーに取り付けることにより、その目的に応じた計測が出来るようになっています。電子密度計測のような干渉計測を行うことも考えられるので、光学プローブとして照射レーザー光の一部を分岐し、2つのうち1つのターゲットチェンバーにおいて照射方向に直行するように入射させ、さらに分岐された参照光を組み合わせることにより、干渉計測が可能な配置になっています。計測器に関しては、EUV光計測用として広ダイナミックレンジX線ストリークカメラ、サブピコ秒X線ストリークカメラ、EUVエネルギーモニター(E-MON)、EUVピンホールカメラ、X線フレーミングカメラ、EUV顕微鏡、背面照射型X線CCDカメラ等を擁しています。干渉計測等の可視計測用として、可視フレーミングカメラ、可視分光器、ゲートCCDカメラ(可視域観測用)等を準備しています。

50 W YAGとターゲットチャンバーの写真及びEUV共同利用実験設備用Nd:YAGレーザー
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