実験報告:ルーマニア ELI-NP研究所の共同実験(QST関西研・福田祐仁)
4月4日(火)から13日(木)にかけて、ルーマニア国ELI-NP研究所にある世界最高強度の10PWレーザーのコミッショニング実験に参加してきました。
最初の実験は、固体薄膜ターゲットを用いイオン加速実験と定めれており、3月初旬からチャンバー内で実験準備が進められてきていました。私自身も、この準備作業に参加し、イオン検出器やX線結晶分光器のセットアップ、固体薄膜ターゲットのアライメント等をルーマニアの若手研究者とともに進めました。10PW実験チームは、PIのドメニコ研究員の他は、ほぼ9割がルーマニア人研究者・技術者という構成でした。10PWレーザー実験という前人未踏の領域でしたので、ビームパターンの均一性などを慎重に確認し、戻り光で光学素子に損傷が起こらないよう慎重に準備作業が進められ、4月13日(木)がファーストショット日と定められました。直前の2日間は、早朝から深夜まで準備が進められ、当日は種々のトラブルに見舞われながらも、ELI-NP所長からの特別な実験延長許可のもと、4月13日(木)の21:40頃に世界初となる10PW出力でのターゲットショット(24fs, 240 J)に成功し、10PWレーザー実験の世界の扉が開かれました。
実験結果は、今後の国際会議などで報告がなされると思います。このような歴史的瞬間に立ち会うことことが出来て、大変感動しました。
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上段:ELI-NP研究所実験棟の全景。
中段:10PW実験チャンバーの内部の様子。右側に見えるのは、直径50cmのレーザー光を集光する光学素子。
下段右:10PWレーザーショットへ向けた準備の様子。実験PIのドメニコ(手前右)、レーザーオペレータ(手前右)、筆者(中央)。