JSPS研究拠点形成事業:パワーレーザーの国際連衡による超域プラズマ科学の国際研究拠点

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開催報告:AIRAPT-JSHPST Summer School Osaka 2025

日本へと久しぶりに誘致された高圧力の科学と技術に関する国際会議 第29回AIRAPT会議に先立って,若手研究者および博士課程学生育成のためのサテライトプレイベント,サマースクールAIRAPT-JSHPST Summer School Osaka 2025を,大阪大学にて9月24日〜27日の日程で開催しました.AIRAPT本会議では前回2023年のエジンバラ大会より,若手の育成と分野の裾野の広がりを狙って,このようなスクールを継続することが強く望まれていました.今回のAIRAPT開催国の日本としてはそれに応えるイベントとなります.最近の観光地としての人気高まりもあり,開催アナウンス当初から予想以上の反響で,10カ国から約60名の参加があり,学内の宿泊施設の予約分は早々に埋まってしまいました.

高圧力科学とは極めて学際的な分野であり,様々な研究が世界で活発に行われています.本スクールでは高圧力下での重要な基礎研究と応用研究,および今後重要となる技術や実験施設などに焦点を当てたテーマを取り上げました.中でも大阪大学が強みを有する,超伝導研究を中心としたSolid State Physics, 高圧地球科学研究を含むEarth & Planetary Sciences,そしてレーザー核融合研究の基盤のひとつでもあるDynamic High Pressureという3つのトピックから,内外9名の世界トップ研究者に参集いただき講義をお願いしました.

レーザー科学における主要な研究分野のひとつとして,レーザー核融合も含む同じく学際的な“高エネルギー密度科学”があげられます.この“エネルギー密度”が,“圧力”と同じ次元 N/m2を持つ量であることからも分かる通り,高エネルギー密度科学と高圧力科学はそれぞれの基礎において強く繋がっています.大阪大学には日本で唯一の,且つ世界有数の大型レーザー装置を用いた高エネルギー密度科学研究が推進されており,今回のスクールでは筆者の研究分野のプレゼンスを,当該コミュニティに示すとともに,これまでの日本の高圧研究者の人的交流に変化を促すことも(実は)狙っていました.このような分野や人の交流が,海外では急速に進んでいるからです.こういった試みは,将来の高エネルギー密度科学研究の係る若い日本の研究者の育成だけでなく,世界レベルの研究環境や頭脳循環にも貢献するはずです.

スクールプログラムは講義だけでなく,学内研究所・研究室見学,ポスターセッション,学外大型施設見学・エクスカーション,で構成しました.レーザー科学に関するトピックからは,まず近年の高強度レーザーを用いた高圧研究で大きな成果を上げ続けている米ローレンスリバモア研のMarius Millot博士により,レーザー核融合研究と超高圧物質研究との関わりを丁寧に説明していただきました.また,同じくローレンスリバモア研究所のRaymond Smith博士からは、高強度のレーザーを用いた動的超高圧実験の基礎から,特に最近の地球惑星物質研究への応用について集中的な解説がありました.HPSTAR研究所の関根利守博士からは,レーザーに限らず軽ガス銃などのツールも含めた,衝撃波を用いた衝撃圧縮実験の基礎について解説がありました.

 

会期の中日である26日には,日本が誇る世界有数の第三世代大型放射光施設SPring-8およびX線自由電子レーザー施設SACLAを見学するエクスカーションを企画しました.研究施設に向かう途上で,兵庫県姫路市に途中下車し,参加者全員で姫路城を見学しました.放射光科学研究センターに到着したのち,高輝度放射光研究施設JASRIの籔内俊毅博士からは,極限物性研究の最先端装置であるX線自由電子レーザーとその応用例について,講義をしていただきました.その後,4班に分かれてラボツアーを実施しました.高圧力科学に関連する,世界的にも有数の施設における主力ビームラインおよび実験ハッチにおいて,理化学研究所およびJASRIの研究員による丁寧な説明がありました.

会期を通じて,若手研究者・学生らの相互の交流はもちろん,世界的に活躍する著名研究者と彼らとの交流が加速度的に促進されていく様子を目の当たりにしました.大学キャンパス内で一緒に寝泊まりして,長い時間を共に過ごすことを狙っていたのですが,その効果は大きかったように思います.また,大阪大学のレーザー科学研究所や理化学研究所のX線自由電子レーザーSACLAをはじめとした,日本の高圧科学を牽引する各研究室・研究施設の見学を通じて,日本が強みを有する最先端の研究に触れる貴重な機会を,彼らに提供することもできたのではと思っています.

(大阪大学工学研究科 尾崎典雅)

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