開催報告:2026 Workshop on Innovative Concepts for Inertial Fusion Energy (IC-IFE)
表記ワークショップ(IC-IFE)がLawrence Livermore National Laboratory (LLNL)のセキュリティゲートのすぐ外にあるUniversity of California Livermore Collaboration Center (UCLCC)にて2026年5月20日~22日の3日間実施された。
IC-IFE は、慣性核融合エネルギー(IFE)の実現に向けて、点火・燃焼物理や高エネルギー粒子輸送などの革新的概念を議論する国際ワークショップである。米国・欧州・日本から80名あまりの研究者が参加し、3日間、朝8:30から夕17時過ぎまで、以下に示すカテゴリーごとに数件の個別発表に加え30分間のディスカッションが行われた。ディスカッションでは、課題・ファンディングや民間企業との共同研究化などをポイントに活発な議論が行われた。
| Topics | |
| Magnetized laser inertial confinement fusion | 3件 |
| Ion stopping power & transport | 3件 |
| Implosion dynamics | 4件 |
| Ion fast ignition | 6件 |
| Electron fast ignition | 5件 |
| Heavy ion fusion | 3件 |
| Ion acceleration and focusing | 7件 |
| Pulsed power magnetized ICF | 3件 |
| Electron acceleration | 3件 |
Innovative Conceptsを対象としたワークショップであり、爆縮そのものや従来型の中心点火方式に関する発表・議論はほとんどなかった。磁場印加による点火時の熱伝導損失抑制やα粒子の輸送制御、高速点火(電子ビームならびに陽子ビーム駆動)、重イオンビームによる爆縮、パルスパワー磁化慣性核融合、またイオン阻止能等が主たる対象である。
磁場印加によるエネルギー輸送制御は物理としては興味深く、私自身も磁場印加した場合の高速点火の点火燃焼特性計算等を行っている。一方で、IFEとして核融合炉まで見据えた場合にはターゲット構造が複雑になりすぎる懸念がある。これは内部にイオン源用薄膜を付けたコーンを用いる陽子ビーム駆動高速点火についても同様である。高強度レーザーにより陽子ビームを生成し、燃料端を点火温度まで加熱する陽子ビーム駆動高速点火では、レーザーから陽子ビームへの高効率変換、燃料への収束照射が課題であるが、100 μm程度の大口径コーンチップを挿入した球殻燃料の高密度爆縮とコーン内へ流入するプラズマジェットによるイオン源薄膜への影響等も課題である。個々の課題の解決だけでなく、全体として整合性のある設計が必要であろう。電子ビーム駆動高速点火では、従来の球殻燃料ではない中実燃料の爆縮と、コーンを用いない点火部形成法が紹介され、サブメガジュールのレーザーで利得50の実現の可能性が報告された。高速点火については理論やシミュレーションによる評価が先行している。実験によりそれらの結果を検証していきたいところではあるが、残念ながら強度1020 W/cm2以上でパルス長がマルチピコ秒で、エネルギーが数十kJのような高強度レーザーは現存しない。高速点火の要となるビーム生成並びに高効率加熱の実証実験のためには、現存の数kJの高強度レーザーでは不十分で、次世代高強度レーザーの必要性を強く感じた。
これらのレーザー駆動慣性核融合以外の重イオンビーム慣性核融合やパルスパワー慣性核融合についても数件の発表の後に活発な議論がなされた。パルスパワーでは核融合出力が10GJクラスになるような炉設計が考えられている。複雑な燃料を繰り返し燃焼させてエネルギーを取り出すという炉設計が成り立つのかどうか、実現に向けては燃料製造・供給・繰り返し運転などの工学的課題も多く、今後の研究開発の進展が注目される。
本ワークショップは今回が第一回であった。今後は、2年ごとに開催予定となったが、2027年9月に広島で開催されるIFSA(International Conference on Inertial Fusion Sciences and Applications)に合わせて、ミニワークショップが行われるとのことである。NIFの点火実証や、慣性核融合よる商用炉を目指す多くのスタートアップ企業の立ち上がりもあり、磁場核融合とともに慣性核融合研究も急速な進展を見せている。1年後のミニワークショップにて、どのような進展が報告されるのか、楽しみである。
(広島大学大学院先進理工系科学研究科・城崎 知至)
