JSPS研究拠点形成事業:パワーレーザーの国際連衡による超域プラズマ科学の国際研究拠点

活動ACTIVITIES

出張報告:ルーマニア・ELI-NP(広島大学・児玉愛梨)

2026年8月25日から9月25日までの約1ヶ月、ルーマニアのマグレレに位置する極限レーザー核物理研究所(ELI-NP, Extreme Light Infrastructure – Nuclear Physics)へ、3週間のビームタイムに参画すべく出張しました。

本研究では、2色の極短パルスレーザーを用いて、光と弱く相互作用する軽い暗黒物質候補粒子の探索を行っています。今回のビームタイムでは、―方のレーザー光を作成するための光パラメトリック増幅(OPA)光学系を実装することを目的としていました。OPAは、非線形光学結晶を用いて2種類のパルス光を組み合わせて一方の光を増幅する技術です。この増幅を3段階で行うことで、探索実験に使用する極短パルスレーザー光を生成します。

私は日本国内で3段OPAを実現しており、現地では実験先導や技術的なサポートを担当しました。今回使用したのは新設したビームラインでしたが、出張前の時点では復旧作業が続いており、ビームを使用した実験開始までに数日の遅れが生じました。期間中は現地のメンバーと調整を進め、最終的に1段目の増幅を達成しました。途中、アライメントのずれによる再調整などのトラブルもありましたが、増幅光の波長分布測定など、特性を評価するためのデータも取得できました。最終目標である3段増幅には至りませんでしたが、限られたビームタイム期間で増幅過程を実現し、その手順や技術などを現地メンバーに共有できたこと、次回に向けた改善点を明らかにできたことは、今後の研究を進める上で重要な足がかりになったと考えています。

ルーマニアへの研究出張は今回で2回目でした。前回に比べて余裕もあり、研究施設外のルーマニアの様子も身近に感じることができました。ELI-NPのゲストハウスでは、朝食付きで宿泊することができます。昼食は肉料理が中心で、日本で食べる時よりも一皿の量が多く、夜は簡単に済ませる日が多かったです。休日にはバスやトラムを乗り継いで、約1時間かけて首都ブカレストを訪れました。レストランでルーマニア料理を楽しんだり、教会や世界で2番目に大きい国会議事堂を見学したりしました。滞在中は晴れの日が多く、日本より乾燥していて過ごしやすい一方で、日差しは強いと感じました。ルーマニアでは野犬が多く、現地の研究者から何度も注意するように言われました。ゲストハウスやレーザー施設付近では見かけませんでしたが、施設外にはいました。また、施設内では前回いなかった新参者2匹(猫)を見つけました。

今回の出張では、これまで以上に光学系の調整技術だけでなく、英語で議論する力も求められました。出張の終盤には研究に関する議論に積極的に参加できていた一方、日常会話では英単語がスラスラ出てこないことにもどかしさを感じました。論文を読むだけでは身につきにくい日常的な語彙の重要性も実感しました。日本人が私一人という環境で調整方法の議論や技術的なサポートをすることも多くあり、この経験は今後の研究活動において自信につながると感じています。

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