JSPS研究拠点形成事業:パワーレーザーの国際連衡による超域プラズマ科学の国際研究拠点

活動ACTIVITIES

出張報告:ルーマニア・ELI-NP(広島大学・久岡 慎治)

2026年9月16日から10月1日までの約2週間、ルーマニアの極限レーザー核物理研究所(ELI-NP)に滞在し、国際共同実験に参加しました。

本研究では、光と弱く相互作用する暗黒物質候補粒子を、2本の極短パルスレーザーを用いて探索することを目指しています。今回の出張では、その実験に必要な光源を生成するためのOPA(Optical Parametric Amplification:光パラメトリック増幅)システムの構築を主な目的として、現地での実験作業に参加しました。

私にとって、海外での大規模な共同実験に参加するのは今回が初めてでした。実験は同じ研究グループの児玉さんをはじめとするメンバーが中心となって進められ、私はその作業に加わる形で参加しました。普段の研究室では経験する機会の少ない大規模な光学システムの構築に携わることができ、光学系の構成や実験の進め方について、多くのことを学びました。また、私自身が今後進めていく研究においてもOPAシステムの導入が必要になるため、今回得られた知識や経験は、今後の研究を進めるうえで非常に貴重なものとなりました。

さらに、次回のビームタイムに向けたレーザーのビームアライメントを、ELI-NPの現地研究者と共同で行いました。この作業に参加した日本人は私一人であり、作業中のコミュニケーションはすべて英語で行われました。初めのうちは、英語での指示を聞き取ることが難しく、相手の説明を理解するだけでも苦労しました。しかし、実験を進めるにつれて少しずつ英語に慣れ、相手の意図を理解したり、自分の考えを伝えたりすることができるようになりました。日を重ねるごとにコミュニケーションが円滑になっていくことを実感できたことは、大きな喜びであるとともに、自分自身の成長を感じられる経験でした。また、国籍や言語の異なる研究者同士が、一つの実験目標に向かって協力することの楽しさや大切さを学ぶことができました。

現地での生活についても、私にとって今回が初めての海外渡航であったため、目にするものすべてが新鮮で、刺激的な毎日でした。往路・復路ともに一人での移動だったため、出発前は飛行機の乗り継ぎや入国審査など、さまざまなことに不安を感じていました。しかし、実際に現地で行動し、一つひとつの課題を乗り越えて無事に帰国できたことは、自分にとって大きな自信につながりました。

また、ビームアライメントで一緒に作業したELI-NPのインド出身の研究者とは、年齢が近かったこともあり、作業を通じて親しくなることができました。休日には一緒にルーマニアの首都ブカレストへ出かけ、観光や食事を楽しみました。ブカレストの旧市街は、歴史を感じさせる建物や石畳の街並みが今も残る一方で、そこには多くの人々が集まり、食事や音楽を楽しむ活気に満ちた光景が広がっていました。日本ではなかなか目にすることのない街並みや文化に触れ、国によって人々の暮らし方や価値観が大きく異なることを実感しました。

今回のルーマニア出張を通じて、研究面では、大規模なレーザー実験に携わることで実践的な知識を得るとともに、国際共同研究におけるコミュニケーションの重要性を学びました。また、初めて日本を離れて生活し、異なる文化や価値観を持つ人々と交流することで、これまで自分が見てきた世界がほんの一部分であったことを実感しました。

今回の経験は、今後の研究活動に生かせる貴重なものであっただけでなく、自分自身の視野を大きく広げてくれるものでした。 研究者としてはもちろん、一人の人間としても多くのことを学ぶことができ、非常に充実した2週間となりました。今回得られた経験を大切にしながら、今後の研究活動にも積極的に取り組んでいきたいと思います。

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