光・量子ビーム科学合同シンポジウム
「光・量子ビーム科学合同シンポジウム2025」開催のご報告
光・量子ビーム科学合同シンポジウム2025(OPTO2025)を2025年6月25-26日に大阪大学コンベンションセンターで開催いたしました。
OPTOシンポジウムは、大阪大学レーザー科学研究所(阪大レーザー研)と量子科学技術研究開発機構関西光量子科学研究所(量研関西研)が合同で開催しており、両機関の連携協力体制をより強固なものとし、光・量子ビーム科学分野の研究開発を加速することを目的としています。本年度は合同シンポジウムを始めてから記念すべき第10回ということで、大阪大学吹田キャンパスのコンベンションセンターを貸し切って行われました。大勢の参加者にご来場いただき、総参加者数は160名でした。
講演の部では、レーザー・光科学に関する幅広い分野からの講演が6件ありました。
1日目には、ハイパワーレーザーを用いた極端紫外光の安定発生に関する研究、超短パルスレーザーによる光合成光捕集タンパク質のエネルギー移動に関する研究、レーザー生成テラヘルツ波を用いたヒトの内耳蝸牛の非破壊検査技術の研究についての講演がありました。
2日目には、ピコ秒の超高強度レーザーとプラズマに関するエネルギー移動に関する理論研究、J-KAREN-Pの高度化によりさらにパルスコントラストが向上し記録級のイオン加速のデータが取得されたという研究報告、ハイパワーレーザーを高速道路のトンネル内に持ち込み打音によりコンクリート剥離を検査するという応用研究の講演があり、いずれも最新のデータを含む興味深い内容でした。会場からも活発な質疑・応答が行われました。
PLDX活動報告では、レーザーにデジタル技術を活用したあらたな展開について活動報告がなされました。
パワーレーザーコミュニティ会議では、量子科学技術研究開発機構の河内副理事がコーディネーターをつとめ、大阪大学レーザー科学研究所兒玉所長が我が国におけるロードマップ2026に向けた計画内容についての説明、阪大レーザー研の重森教授から文部科学省補正予算2024による、激光XII号、LFEX、SENJU、トリチウムターゲットおよびL棟レーザー照射エリアについての改修・高機能化計画についての説明がありました。量研関西研羽島部長からは、繰り返しハイパワーレーザーに用いるミラー・回折格子の冷却の問題についての研究成果の発表がありました。それぞれにおいて活発な意見交換が行われました。
ポスターセッションでは、140件にもおよぶ発表がありました。久々に会う研究仲間やOB同士で研究成果や近況を話し合い、笑い声が響くとても和やかな時間でした。
シンポジウムの中で大阪大学近藤賞の授賞式が行われました。萌芽論文賞2名・若手論文賞1名に賞状および副賞が授与され、各受賞者より記念講演が行われました。どれも大阪大学国際賞にふさわしい素晴らしい研究発表でした。
ポスター発表においてはベストポスター賞に2名が選出され表彰状が贈られました。この若い研究者たちが、今後ますます研究に邁進されることを期待しています。
初日の夕刻には、千里阪急ホテルに会場を移動して、故三間圀興教授を偲ぶ会が催されました。三間先生を偲ぶ記念講演とともに、食事会が催されました。久々にお目にかかれた大先輩先生方ともお話しすることができました。三間先生に感謝するとともに我々もこれからますます頑張りたいという強い思いを抱きました。
プログラム
*OPTO2025シンポジウム Programは こちら
6月25日(水)
〇講演1 田中のぞみ(大阪大学 レーザー科学研究所)
EUVリソグラフィのボトルネック解消に向けた高強度極端紫外光による水素ラジカル生成の最適化
〇講演2 坪内雅明(量研 関西光量子科学研究所)
遺伝子組換えと超高速分光との融合による光合成光捕集タンパク質の量子生命科学的研究
〇講演3 芹田和則(早稲田大学大学院 情報生産システム研究科)
耳疾患の早期診断に向けた内耳蝸牛の非破壊3Dテラヘルツイメージング技術の開発
6月26日(木)
〇講演4 岩田夏弥(大阪大学 レーザー科学研究所)
kJ PWレーザーによる高密度プラズマ加熱の理論研究
〇講演5 長谷川登(量研 関西光量子科学研究所)
高強度レーザーを利用したインフラ点検技術の開発と社会実装
〇講演6 桐山博光(量研 関西光量子科学研究所)
J-KAREN-Pの高度化とイオン加速実験の現状と今後の展開
〇活動報告 藤岡慎介 (大阪大学レーザー科学研究所)
PLDX活動報告
〇コミュニティ会議
〇第19回大阪大学近藤賞
<萌芽論文賞受賞者>
杉本 馨(京都大学)(一番左)
題目:「相対論的レーザープラズマ相互作用における陽電子生成・加速機構の自己組織幾何機構の発見」
境 健太郎(核融合科学研究所)(左から二番目)
題目:「レーザープラズマを用いた磁気リコネクションの電子スケールダイナミクスの研究」
<若手論文賞>
栗原 貴之 (東京大学)(右から二番目)
題目:「フェムト秒レーザーによる乱雑物性の観測手法の開拓」
〇2025ベストポスター賞
<受賞者以下2名>
- 堤 優太 (京都工芸繊維大学)(写真真中/代理受賞者 石野氏)
- Bentley Phillip David (量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)(写真左)
■ポスターセッションの様子
また、来年、素敵な成果報告の場になることを楽しみにしております!