大阪大学 レーザー科学研究所

研究グループGROUPS

量子開拓(ENEQs)

グループの概要

ENEQsグループでは、超高強度レーザーを用いた超高強度電磁場下での、新たな量子力学的研究領域の開拓を目指します。
チャープ・パルス増幅(CPA)法の発明によって、レーザー光の照射強度は飛躍的に(3-4桁)増大し、種々の領域で超高強度レーザーを用いた新たな研究展開が図られています。将来の高強度の領域では、超高強度場と真空の相互作用(真空偏極やウンルー放射)、アクシオン様粒子仮説の検証、重粒子のレーザー直接加速による粒子衝突実験によってクォーク・グルオン・プラズマの生成等のこれまでに到達しえなかった非線形量子電磁力学、量子色力学の全く新しい実験領域を開拓することが期待されています。我々のグループでは、その様な、今後、想定されている未踏の超高強度電磁場下で可能となる実験提案を通して、レーザー装置の今後の開発を牽引すると共に、より現実的な実験パラメータを模索します。
高強度レーザー自身の超高強度電磁場以外にも、高強度レーザーが作り出す極限的な環境下では、超高圧・高密度物性や、超高強度電場、磁場下での量子現象などの種々の量子力学的課題が提案されています。レーザー科学研究所では、従来からその様な研究課題にも取り組んでおり、今後、横断的な協力研究体勢を構築することによって、量子場研究の新たな拠点形成を目指しています。

研究内容

高強度レーザーによる電子・陽電子対生成

高強度レーザーを用いることによって、従来にない高密度の電子・陽電子対を生成することができます。生成の物理は、Bethe-Heitler過程と言う量子電磁力学的過程で目新しいものではありませんが、高密度、高エネルギー(MeV)の相対論的プラズマとして新たなレーザー宇宙物理の実験プラットフォームとなることが期待されています。また、今後の真空崩壊、電子・陽電子衝突実験の準備研究としても重要です。

高密度の陽電子ビームの生成は、反水素合成や電子・陽電子プラズマ研究などの純粋に理学的な研究領域のみならず、原子・分子散乱、固体表面・界面、バルクの電子状態や格子欠陥の研究と物質科学でのプローブ・ビームとして広い応用が期待されています。

 

核偏極核融合燃料の開発

熱核融合で利用される主要な反応は、D + T→ 4He + n あるいは、D + 3He→ 4He + p です。これらの反応は、主に核スピン1と1/2で作る合成スピン3/2の共鳴状態をへて進行します。そのため、統計重率を考えると、等方的な衝突の4/6のみが反応に寄与していることになります。逆に、核スピンを揃えることによって、反応断面積を50% 増加することができると考えられます。偏極核燃料に供給が現実的なものとなれば、国際熱核融合炉(ITER)や米国国立点火施設(NIF)など、今後の熱核融合研究にとって大きな福音となります。我々は、レーザー誘起核偏極や磁性錯体による高温保持など、新たな、偏極ならびに偏極保持の手法の開発を行っています。

 

非線形電磁気学の理論構造の解析と現実的な実験的検出への提案

古典電磁気学は、量子電気力学的な補正や未知の粒子との相互作用によって修正を受けるのではないか、という考えがあります。この観点では真空は光をまっすぐ通す透明な媒質ではなく、例えば色を変えたり方向を変えたりする非線形の媒質として作用すると考えられています。理論、実験の研究が進められていますが、特に実験での検出が難しく、非線形効果の有無を含めて確立されていません。

私たちはこの非線形電磁気学に対して、ラグランジアン形式を使った理論的なアプローチを行っています。大きな方針は2つで、1つは数学的な側面から理論の構造や問題点を探ることです。例えば、同じ問題に対して解が本当に一つしかないか、などの基礎的な問題は明らかになっていません。もう1つは現実的な実験提案をすることです。遠い未来の実験装置で可能な検証方法ではなく、既存の装置、あるいはその現実的な延長で可能な実験系の設計を目指しています。

メンバー

中井 光男 名誉教授/招へい教授
柴田 一範 助教

 

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