ようこそレーザー研へ! 田丸先生 着任インタビュー
2024年4月に田丸裕基先生が助教として着任しました。企業出身の田丸先生に、これまでの研究や今後レーザー研でどのような研究をしていきたいのか、お伺いしました。
研究者を志したきっかけ、経緯を教えてください。
もともと小中学校のころから理科の実験をやっている時に目の前で何かが起こっているのを見るのが好きでした。その流れでなんとなく理系の大学へ進学をしました。そこにレーザーの研究をやっている研究室があり、ゲームや映画などのイメージで「レーザー=すごい+かっこいい」とピンときて、あまり深く考えずにその研究室への配属を決めました。その時はやっていることもあまりわかっていませんでしたが、初めて研究室の先輩と一緒にレーザーを使った実験をした時にワクワクしたことは覚えています。そこから大学、大学院の修士課程での基礎的な研究、就職後の会社でのより実用に近い研究開発とレーザーを作ることに関わり続けることができ、その中で「レーザー=すごい+かっこいい+世の中の役に立つ」と感じ、より深くレーザーについて研究をしていきたいと思い、研究者を志しました。今もこの研究はすごくてかっこいいものという思いが自身の原動力となっています。
これまでどのような研究をされてきましたか。
大学、大学院の頃は2023年にノーベル物理学賞を受賞した「アト(10-18=100京分の1)秒パルス」という一瞬だけ発生する光を作り出すためのレーザー光源に関する研究を行っていました。このときに関わった大学や研究機関の研究者の人たちがみんな自由に、そして楽しそうに研究をやっていたことが今も印象に残っています。修士課程を修了後、ギガフォトン株式会社という世界で2社しかないパソコンやスマートフォンなどの中に入っているような半導体を作る装置のためのレーザー光源を作っている会社へ就職しました。そこでは、これまでにない性能を目指した新しいレーザー光源の研究やそれに関連する要素技術の研究を行っていました。会社では、様々な分野の専門家と協力しながらより良いレーザー光源の実現に向けてみんなで頑張っていくという貴重な経験をたくさんさせてもらいました。これまではレーザーの種類などは異なりますが、主にレーザー光源を作ることに関係する研究を行ってきました。今後もレーザーによって世の中が少しでも便利になることを目指して研究をやっていきたいと思っています。
現在の研究内容・テーマを教えてください。
現在取り組んでいる研究内容は、非常に強い光を発生させるレーザーに関する研究です。大阪大学レーザー科学研究所は激光Ⅻ号やLFEXレーザーと呼ばれる世界中を見渡しても希少な強いレーザー光を出すことのできる装置をこれまでも研究してきました。しかし一日に光を出すことができる回数が限られており、応用を探し出していく上でボトルネックとなっていました。もしもそのように強いレーザー光を一日にたくさん出し続けることができれば、気軽に色々なことを試すことができます。そのような装置が完成すれば、基礎科学の研究だけでなく産業用途など、現時点では思いもよらない新しい応用先をどんどん発見していくことができると思っています。そんな「夢のレーザー」を実現するための研究を行っています。
研究のやりがい、楽しさ、面白さはどのようなところに感じますか。
自分で考えた実験をやった時は大体上手くいかずによくわからない結果が得られます。何が原因でダメなのか全くわからない状態から色々試してみながら、原因を探っていき、狙い通りの結果や逆に予期せぬ結果に辿り着いていく過程がミステリー小説のようで個人的には面白いと思っています。また得られたデータを解析しているうちに、この結果は世界中で自分が初めて発見したとわかった時は研究をしている中で一番の達成感を感じます。あとは単純かもしれないですが、物を作っていくという行為が好きなので自分が作った装置が動いているところを見るとしばらく実験を止めて装置を眺めてしまいます。
将来の夢はなんですか。
漠然とした夢ですが数10年後や100年後にも使われて人の役に立っている「なにか」の基礎となるような研究をしたいと思っています。私の顔や名前も知られていない人が何気なくそれを使っている、将来そんなふうに実を結ぶ研究ができるように頑張っていきたいと思っています。これまでの研究生活を振り返ってみると、学生の頃も企業で働いている頃もずっと周りの人に恵まれてそのおかげで楽しく自由に研究をすることができました。夢とは違うかもしれませんが、これから少しずつ周りにその恩返しをしていきたいと思っています。
これから研究者を目指す後輩たちに、メッセージをお願いします。
なにごとにもチャレンジしてみると良い経験になると思うのでぜひ好奇心旺盛に色々やってみてください。忘れかけた頃にその経験が役に立つこともたくさんあると思います。また研究の面白いところの1つに色々な分野の人と協力して新しい研究テーマを始めていくことがあると思います。これから研究者になったみなさんと協力して研究ができる日を楽しみにしています!