大阪大学 レーザー科学研究所

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ようこそレーザー研へ! 加藤先生 着任インタビュー

研究者を志したきっかけ、経緯を教えてください。

はっきりとしたきっかけがあったわけではなく、もともとは高校での配布物の中にあった進路診断チャートのようなものを試したところ研究職向きという結果になったので、じゃあ研究者かなとぼんやりと考えていただけだったように記憶しています。その後に読んだ本で量子力学のことを知って物理に興味を持ち大学では物理を専攻したものの、特に研究したいテーマがあったわけではなく、学部4年生のとき研究室紹介の際にたまたまお話しする機会があった、レーザー実験の先生の研究室に進学することにしました。それ以来、ずっとレーザーを使った研究を続けています。

 

これまでどのような研究をされてきましたか。

ごく一瞬だけ強い光を出すことができる「フェムト秒レーザー」という装置を用いた実験を行ってきました。「フェムト秒」は10のマイナス15乗秒のことで、フェムト秒レーザーを使うと非常に短い瞬間のみ光を対象に当てることができます。これを利用して、物質の中で起きる極めて高速な変化を調べることが可能です。またフェムト秒レーザーの光のエネルギーは短時間に集中しているので、瞬間的な光の強度をとても高くすることができます。そのため、強い光が必要な「非線形光学効果」と呼ばれる現象を効率的に起こせます。私はこれまでフェムト秒レーザーを活用して、気体分子、金属ナノ構造、半導体、光機能材料など、さまざまな対象に関する研究を行ってきました。

 

現在の研究内容・テーマを教えてください。

フェムト秒レーザーを利用して、光より波長が長く電波より波長が短い電磁波である「テラヘルツ波」パルスの発生や応用に関する研究を行っています。テラヘルツ波は、可視光に対して不透明な紙やプラスチックなどを透過できることから、手荷物点検や工業製品検査などへの応用が進められています。また、テラヘルツ波領域における透過率や反射率を測定することで、材料の特性評価や分析を行うことができます。さらに、無線通信の高速化に向けてテラヘルツ波の通信への利用が検討されており、それを支える素子の開発も行われています。

テラヘルツ波パルスを発生する方法の代表例として「光伝導アンテナ」があります。光伝導アンテナは図1のように、半導体基板の上に金属製のアンテナパターンが形成されています。このアンテナには微小なすき間(ギャップ)が設けられていて、電源につないでも通常はほとんど電流が流れません。このギャップにフェムト秒レーザー光を照射すると、半導体基板に電子と正孔が生成されます。これらは電荷を有しているのでギャップ間の電場で加速され、瞬間的に電流が流れます。この瞬時電流からテラヘルツ波が放射されます。テラヘルツ波パルスの発生には光伝導アンテナ以外にも、半導体結晶における非線形光学効果を使う方法や、磁性体への光照射で生成される「スピン流」を活用する方法などさまざまな方式があり、より優れた発生技術を目指して研究が進められています。

 

研究のやりがい、楽しさ、面白さはどのようなところに感じますか。

一つは、実験装置を自分で設計して自分で組み立てられるところです。私が使用する実験装置では、ビームを反射させるためのミラーや、光の状態を制御するための光学素子をいくつも並べて、試料や検出器に光やテラヘルツ波のパルスを導いていきます(図2)。この光学系の設計がパズルのようで楽しいです。実際に装置を組み立てる際は、ミラーの角度や素子の位置を順番に丁寧に調整していく必要があります。ミスをして途中からやり直しになることもあり、そのときはがっかりします。また装置組み立ての最終段階では、2つのパルスを時間的にも空間的にも精密に重ね合わせなければならないことが多く、新しく装置を作る際はいつもここで苦労します。その分、パルスが重なって探していた信号が見つけられたときは大変うれしいです。

もう一つは、自分たちの研究成果を論文として学術雑誌に発表することで、世界中の研究者に発信できるとともに、取り組んだ仕事の記録を後世に残せるところです。論文を書くのは大変で、発表に値するような結果を揃えるのはもちろんですが、その内容が他の人に十分伝わるよう文章や図にまとめなければなりません。原稿をより良くするために、追加実験を行ったり、何度も文章や図を直したりすることになります。論文を雑誌に投稿しても審査の結果掲載に至らず悔しい思いをしたことも度々あり、また審査員の厳しいコメントへの対応に四苦八苦することもしばしばです。それだけに、論文掲載が決定したときは苦労が報われた喜びがあります。最近では、自分たちが書いた論文が他の論文に引用されたことを簡単に知ることができます。知らない人が自分の論文を引用しているのを見つけると、研究成果が他の研究者に届いたことを実感でき大きな励みになります。

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