大阪大学 レーザー科学研究所

開催報告REPORT

第10回光科学フォーラムサミット

今回で第10回となる光科学フォーラムサミットが、2018年11月14日(水)、東京の科学技術館6号館で開催された。テーマ「パワーレーザーが拓くロボットフォトニクス」であり、主催は大阪大学レーザー科学研究所、共催はパワーレーザーフォーラム、光エレクトロニクスフォーラム、IFEフォーラム、協賛はレーザー学会、レーザー技術総合研究所、日本フォトニクス協議会、光科学アライアンス、後援はオプトロニクス社であった。参加者は約200名と大変賑わった。

内容

まず主催者挨拶として兒玉了祐所長(大阪大学レーザー科学研究所)より、引き続き来賓挨拶を久間和生会長(レーザー学会)からいただいた。続いて以下5件の講演があった。

講演1:パワーレーザー応用 -医療からロボットフォトニクスまで-

兒玉了祐(大阪大学レーザー科学研究所)

パワーレーザーおよびその応用について述べられた。パワーレーザーが果たす産業界での役割は日増しに大きくなっている。応用もレーザー加工・改質のみならず、光センシング、医療診断・治療、新物質・材料創成、社会インフラの非破壊検査、レーザーエネルギー伝送・給電など、ロボット、運輸、医療、農業、土木・建築等の分野へと広がっている。また大型パワーレーザー施設の重要性についても述べられた。

講演2:動きだしているロボットフォトニクス –技術概要と最新動向-

村井健介(産業技術総合研究所関西センター)

その技術概要と最新動向について述べられた。光とロボットの融合領域であるロボットフォトニクスは新しい概念であるが、市場の急速な拡大とともに世の中に浸透しつつある。ロボットにはその目となるLiDARやビジョンだけでなく、検査、表示、通信など幅広く光技術が導入されつつある。

講演4:ロボットフォトニクスによるインフラ診断

島田 義則 (レーザー総研)

パルスレーザーを物質に照射して発生する衝撃波を用いて物質内部の情報を得ることができる。応用として鉄道トンネルを対象としたレーザーによる欠陥検出手法の実用化を進めてきた。本手法をインフラの健全性評価に幅広く展開するための最新の取り組み、および今後のロボットフォトニクスを含めた展望について述べられた。

講演5: サービスロボット用レーザー測域センサ(LiDAR)が求めるフォトニクス技術

嶋地 直広(北陽電機株式会社)

レーザー測域センサ(LiDAR)技術とその応用について、特にサービスロボット応用について技術から動向まで述べられた。レーザー3D計測技術を用いた自律移動するロボットの環境認識など詳細にお話された。

 

2.パネルディスカッション

引き続き“『ロボット・AI』社会におけるレーザーの役割、日本が勝利する方策は”というテーマでパネルディスカションがあった。パネリストは、講演をいただいた兒玉了祐氏(大阪大学)、村井健介氏(産業技術総合研究所関西センター)、鷲尾 邦彦氏(パラダイムレーザーリサーチ)、嶋地 直広氏(北陽電機株式会社)に加え藤田 雅之氏 (レーザー技術総合研究所)であった。座長は山本和久氏(大阪大学)が行った。
パネルディスカッションでの質疑として、レーザーの特長や優位性については?、『ロボット・AI』社会におけるレーザーの役割は?、『ロボット・AI』社会におけるレーザー応用の産業化のための課題は?海外に勝っているか、日本の位置付けは?、科学技術イノベーションを行うための大学、国研の取り組みは?日本が世界をリードするためには?などがあり、会場も交えて活発なやりとりが行われた。
まとめとしては、“レーザーの時代はここに来て本格化してきたが、日本が今後も勝つためには、国には単発的にプロジェクトをやるのではなく数十年の長期を考えてプラニングしてほしい(ドイツのように)。産学官協力体制と更なる国の支援が必要である。 ”という話であった。

全体まとめ

パワーレーザーおよびその応用技術は、21世紀において新たな学術創成と共に新規産業創出を実現する重要な基盤技術として、国内外において大きな期待が寄せられている。一方、ロボット産業はこれからの大きな発展が見込まれている。パワーレーザーとロボットが出会った時、新たな研究開発、産業が生まれる。本分野を牽引する有識者による講演と、それに引き続くパネルディスカションで、最先端動向と今後の方向性などが明らかにされた。

ページ先頭へ戻る