ニュークリアフォトニクス(NP)
グループの概要
多くの方にとって「ニュークリアフォトニクス」という言葉自体が聞き慣れないものであると思います。それもそのはずで、ニュークリアフォトニクスは2010年代に入ってから生まれた、とても新しい研究分野です。この新領域を開拓するために、本グループは2018年4月に発足しました。 本グループでは、「ニュークリア」の意味するところである「原子核」を、フォトニクスおよびパワーレーザーの技術を使って制御・操作することで、これまでにない学術研究・応用研究を展開することを目的としています。 原子核をレーザーの電場で直接引き剥がすには極めて高い強度のレーザーが必要になります。しかしながら、高強度レーザーによって発生した2次粒子(イオン・電子)あるいは光(高エネルギーX線・γ線)を用いれば、現在利用できるレーザー装置を使って、原子核を制御・操作することが可能になります。 社会実装を目指した産業応用研究から、宇宙物理のような科学応用研究に跨る広い領域を、ニュークリアフォトニクスというキーテクノロジーによって結びつけ、同時並行的に研究開発を推進します。
連携機関
京都大学化学研究所、理化学研究所、兵庫県立大学、光技術産業創成大学院大学、神戸大学、量子科学技術研究開発機構、豊田中央研究所、ELI-BL(チェコ), ELI-NP(ルーマニア)、スペインCLPU、中国科学院物理研究所、英国ベルファスト大学、英国ラザフォード研究所、ロシアMEPhI、ロシア科学アカデミー高温研究所、スイス連邦材料試験研究所
外部資金プロジェクト
- レーザー駆動中性子源の開発と高速ラジオグラフィへの応用
科学技術振興機構 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産業ニーズ対応タイプ、コンパクト中性子源とその産業応用に向けた基盤技術の構築 平成28年1月~平成32年3月 - 新規量子減としての相対論的磁気リコネクション
科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業/さきがけ・光の極限制御・積極利用と新分野開拓 平成27年12月~平成31年3月
報道
2017年2月15日 | 日経産業 朝刊8面「阪大 レーザーで粒子線発生、強度100分の1で実現 がん治療装置、小型化にらむ」 |
2017年2月14日 | NHKニュース「粒子線を効率よく生み出す新技術」 |
2017年3月 2日 | 朝日 朝刊20面「レーザー光で粒子加速 効率化」 |
2017年2月13日 | 共同通信「レーザー粒子加速を効率化 大阪大など がん治療に期待」 |
2017年2月20日 | 日刊工業 朝刊16面「レーザーで粒子加速 阪大、新手法を発見 粒子線がん治療に応用」 |
研究内容
レーザー駆動イオン加速
レーザーの光を極めて短い時間(およそ1兆分の1秒)で、小さい領域(毛髪の断面くらい)に集中して物質に照射すると、極めて強い電場や磁場が発生します。この電場を利用すれば、非常に短い距離(数十ミクロン)で、イオンを高いエネルギー(数千万電子ボルト)まで加速することができます。この技術によって、従来の加速器を大幅に小型化することが可能になります。当グループでは、レーザーで加速したイオンを、中性子発生などのニュークリアフォトニクス研究に利用しています。
また、レーザーの作る極めて強い磁場同士を接触させて磁気リコネクションと呼ばれる現象を実験することで、宇宙現象にヒントを得た新しい粒子加速機構の発見を目指しています。
レーザー駆動中性子源
高出力レーザーで加速されたイオンを、特定の物質にぶつけることで、原子核の構造が変化し、中性子と呼ばれる粒子を発生することが出来ます。中性子は物質を透過する能力が高い一方、ある特定の物質は透過しにくい性質を有するので、従来のX線とは違った非破壊検査に利用するなど、新しい応用が期待されます。
当グループでは、数ミリ程度のコンパクトな領域から、中性子を発生することに成功しました。これは、原子炉などの従来の中性子源に比べて、極めて小さいものです。また、中性子の時間パルス幅が短い(10億分の1秒程度)ため、高い時間分解能による分析などに応用できます。また、瞬間的に高い密度で中性子を発生できる特徴を用いて、様々な宇宙イベントにおける中性子環境を実験室で再現します。現在では失われた元素(宇宙核時計)を復活させて、銀河系誕生の謎に迫る研究などに取り組んでゆきます。
メンバー
有川 安信 | 准教授 |
余語 覚文 | 教授 |
Morace Alessio | 講師 |
加藤 義章 | 招へい教授/名誉教授 |
三間 圀興 | 招へい教授/名誉教授 |
白神 宏之 | 招へい教授/名誉教授 |
早川 岳人 | 招へい教授(量研機構) |