大阪大学 レーザー科学研究所

研究グループGROUPS

極限プラズマ(KGP)

グループの概要

KGPグループは、宇宙の莫大なエネルギーの生成と輸送の謎に迫るべく、レーザーを用いた宇宙の極限状態の実験的な研究とその理論研究に取り組んでいます。また、レーザー粒子加速に基づく我々の研究は慣性核融合のほか、医療・セキュリティ応用を目指した小型量子線源の研究開発への貢献も期待されており、理学から工学に跨る広い視野を持って日々研究に取り組んでいます。世界一薄い材料 “グラフェン” を用いた粒子加速やナノ構造材料中の高効率レーザー相互作用など、当研究室が誇る技術の活用法を模索するとともに、米国、英国、フランス、ルーマニア、台湾をはじめとする強力な国際協力のもとで、明日の暮らし向きを変える革新的な技術の開拓を目指しています。

研究室HP

 

研究内容

1.実験室宇宙物理

宇宙空間には、宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子が光とほぼ同じ速度で飛び交っています。こうした宇宙線の起源や加速機構については未だに多くの謎が残されています。宇宙は広大で我々が観測できる宇宙は限られており、特に遠方の天体のプラズマを直接観測する方法はありません。実験室宇宙物理では、無衝突衝撃波や磁気リコネクションといった宇宙の現象を実験室で再現し、放出されるプラズマやX線の観測結果から数ある理論モデルを検証します。近年の本研究室の実験成果によって、ベールに包まれていた宇宙のエネルギー輸送の謎が少しずつ明らかになってきました [1]。本研究室では実験とシミュレーションの両面から宇宙物理学に関する様々なトピックに挑戦しています。

[1] Y. Kuramitsu et al. Nature Communications, vol. 9. 5109 (2018)

図1(左)レーザー生成プラズマの膨張に伴う周辺磁場の影響や電流生成の概念図 (右)磁気リコネクションに関連して生成するプラズモイドの観測例 [1]

 

2.慣性核融合

脱炭素社会の実現が叫ばれる中、持続可能な次世代エネルギー源として注目されているのが「核融合」です。恒星のエネルギー源でもある核融合は、「水」を燃料資源とする実質的に枯渇しないクリーンで安全なエネルギー源として世界中で研究が進められています。本研究室では、レーザーを用いた核融合方式(慣性核融合)の中でも「高速点火」と呼ばれる高利得・低コストを目指した核融合方式に着目し、その要となる基礎物理の解明に取り組んでいます。超高強度レーザーとプラズマとの相互作用、流体不安定性の抑制、高速電子の生成と輸送制御といった様々な課題へ実験や大規模シミュレーションを用いて取り組んでおり、高速点火方式による史上初の“核融合点火”の実現を目指します。

[2] T. Gong, H. Habara et al., Nature Communications, vol. 10, 5614 (2019)

図2(左)高速点火方式慣性核融合の概念図 (右)高速電子ビームによる高密度燃料プラズマの加熱の様子(上段:実験結果、下段:シミュレーション)[2]

3.量子ビーム応用

レーザーを利用したプラズマ生成や粒子加速はすべての相互作用がミクロの領域で完結するためシステム全体を小さくすることができ、放射線防護の観点でも非常に有利です。本研究室では、レーザー粒子加速の原理を用いて加速器を可能な限りコンパクト化し、高エネルギー電子やイオン、さらにはそれらの2次反応によって生成する中性子などの「量子ビーム」を使って、がん治療のほか、ラジオグラフィによる画像診断、爆発物検査といった様々な応用の実現を目指しています。特に、最近は“ギガ電子ボルト(GeV)”級のイオン加速がレーザーでも可能になりつつあり、これにより核破砕反応などを用いた高輝度な中性子発生がレーザーでも可能になると期待されます。我々はこうしたレーザー駆動量子ビームの開発[3]から、その魅力ある活用術の開拓まで、幅広い視点で研究に取り組んでいます。

[3] Y. Abe et al., Appl. Phys. Lett. 111, 233506 (2017)

図3 レーザー駆動量子線源を用いた保安検査の概念図

メンバー

蔵満 康浩 教授
羽原 英明 准教授
安部 勇輝 助教

 

ページ先頭へ戻る